愛の知恵袋 68
夫婦愛を深める“幸せ実現の法則”

(APTF『真の家庭』180号[2013年10月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

「いまさら、夫婦の勉強なんて…」

 先日、ある県で開催した夫婦セミナーに参加された60代の男性が、終わった後に話しかけてきてくれました。「いやぁ…、目からうろこでした。今になって初めて妻の気持ちがわかりました。考えを改めて、もういっぺんやり直しですね!」。

 そばにいた奥さんは、「私もです。男と女って、ほんとに違うんですね」と、ニコニコされていました。

 全国各地で、家庭学の講座や夫婦セミナーの講師をさせていただく機会が多いのですが、主催者の方々からよく耳にするのは、「いいセミナーだから是非どうぞ、と参加を勧めても、『いやあ、もう、この年ですから…』と言う人が多くて残念です」という声です。

 確かに、50代、60代ともなれば、それまでに夫婦の間でさまざまな苦い経験をしていることもあって、「いまさら何をしても私達の関係は変わらないだろう…」というあきらめにも似た思いを持っている人が多いようです。

 しかし、そう思っておられた年配の方でも、実際に講座に参加して、男と女の心理の違いを詳しく知ってみると、前述のご夫婦のように、長年、相手に対して持っていた考えが大きく変わったという例は少なくありません。

夫婦愛の完成は、人生最高の課題

 「人生の最終目的は人格の完成である」と言われますが、人格完成者とは、どんな人なのでしょうか。社会的事業の成功者でしょうか、博学の知識人でしょうか、難行苦行をした修道者でしょうか。

 実はそのいずれでもなく、「真の愛情において、最も成熟し完成した人」のことであると言えるでしょう。

 もっと厳密に言えば、「真の愛情において、最も成熟し完成した“夫婦”」のことであると言うべきでしょう。

 なぜなら、この世の中のあらゆる人間関係の中で、最も大切で最も難しいのが夫婦の関係だと感じるからです。

 親が子を愛し、子が親を愛する…。これは、この世で最も美しい愛の姿のひとつですが、ある意味では、親子は本能でも愛することができます。それよりもっと、自主的努力が必要なのが、自分の友人や隣人に信義を尽くすことでしょう。

 しかし、それ以上に、もっと高度な努力を必要とするのが、実は、夫と妻の関係なのです。従って、夫婦愛の完成こそが、人生最高の課題と言えます。

 夫婦仲が悪くなれば家族全体が葛藤し、夫婦関係が破綻すれば家庭は崩壊します。

 逆に、夫婦仲が良くなれば、毎日が楽しく、家には笑いが絶えず、子供たちも伸び伸びと成長できます。夫婦の愛の成熟は、夫と妻を幸せにし、家族と社会全般に大きな喜びと希望と活力をもたらします。

最も厳しいのは、家族の評価

 世の中には、友人達から信頼され、社会的にも尊敬されている人はたくさんいますが、意外に難しいのが、自分の家族から認められることです。

 外では評価されていても、家族から尊敬されるのは容易ではありません。身近にいる家族は、表も裏も知り尽くしているので、はるかに評価が厳しいのです。

 自分の子供に心から尊敬されている人は、本当に立派だと思います。しかし、その子供以上に採点が厳しいのが、妻であり夫です。

 そう考えると、本物の人格者というのは、「社会から認められているだけでなく、その子供から尊敬され、さらに、妻(夫)にも心から尊敬され慕われている人」であるといえるでしょう。

夫婦愛を深める“二つの愛の法則”

 夫婦愛の完成は、最も高度な課題であるがゆえに、それを達成するためには、熱心な研究と工夫と努力が必要です。そしてまた、“気が遠くなるほどの忍耐と寛容”が必要とされる道でもあります。

 結局、私たちは、高齢になるほど、早く勝利しなければならないのですから、夫婦愛に関する本を読んだり、講演を聴いたり、セミナーに参加したり…という行動が必要です。そのための時間やお金や労力を惜しむべきではありません。

 どんな夫婦でも、まず、自分が男女の心理の違いを詳しく学び、“幸せ実現の法則”を実践していけば、驚くような変化を経験することができます。

 “幸せ実現の法則”とは、私が20数年間の研究でたどり着いた、人間関係成功の究極の秘訣です。この法則は二つの愛のルールによって成り立っています。

 愛の第一法則は、「相手の嫌がることをしない」ということであり、愛の第二法則とは、「相手が喜ぶことをしてあげる」ということです。

 第一法則を実践すれば、険悪だった関係が穏やかな関係に回復します。第二法則の「相手が喜ぶこと」というのは、「相手が望んでいること」、「相手が期待していること」という意味ですが、これを実行してあげれば、二人の関係は驚くほど喜ばしい関係に変化していくのです。