青少年事情と教育を考える 60
同性婚カップルと子供のアイデンティティ

ナビゲーター:中田 孝誠

 産経新聞ウエブサイト(4月6日付)に、「『私はだれ?』フランスで人工授精児たちが権利を訴え 生殖医療、法見直し拡大」という記事が掲載されていました。
 夫婦間ではなく第三者の提供精子で生まれた子供たちが、出自を知る権利を訴えて精子ドナー情報の開示を求め、そのために法律を見直す動きが広がっているというものです。

 ドナーの情報はこれまで非開示が原則とされていましたが、子供が「自分の親は誰なのか」という出自を知ることはアイデンティティを確立する上で重要な問題だというわけです。
 日本でもAID(非配偶者間精子提供)が行われてきましたが、子供のアイデンティティ確立が難しくなったり、両親に対して強い不信感を持った子供もいるなど、議論となってきました。

 一方、やはり今月上旬に、アメリカで男性の同性婚カップルが生殖医療で子供を持つというニュースが報道されました。しかも、カップルの子供を代理出産したのは61歳の母親でした。
 息子の精子とパートナーの妹の卵子により体外受精が行われ、この母親にとっては自分の孫を代理出産したことになります(BBCニュースのウエブサイト、4月3日付)。

 フランスでは2013年に同性婚が認められましたが、その際も「子供には父親と母親が必要だ」として、同性婚カップルが子供を持つことに反対する30万人規模のデモが行われました。
 現在は養子縁組が認められていますが、同性婚カップルの4割が生殖医療によって子供を持つことを希望しているとの調査もあります。

 アメリカでは、同性カップルでも子供の成長に「影響はない」という研究と、「影響はある」という研究があり、大きな論争になってきました。
 同性カップルのもとで育った子供たちも、声を上げ始めています。

 子供への影響を実証するには、中・長期的な研究が必要だといわれています。ただ、アイデンティティの問題をはじめ、子供が大きな苦しみを抱える可能性は否定できません。特に父親と母親の役割ということから見ても、簡単に考えるべきことではありません。

 結婚は、「個人の権利」にとどまらず、子供を産み育てることにつながります。だからこそ、公的機関の責務として結婚した夫婦を支援する仕組みがあるわけです。
 現在、日本でも同性婚訴訟が行われていますが、結婚、子供を育てること、家庭が持つ本来の意味を踏まえて判断すべきではないでしょうか。