コラム・週刊Blessed Life 58
深刻な難民問題

新海 一朗(コラムニスト)

 現在、世界が抱える問題の中で、難民問題は非常に深刻な状況にあります。

 どれくらい深刻か。国連難民機構(UNHCR)の発表によれば、現在、全世界の難民数は6,530万人に上る数で、この数字は、国家人口に換算すると、世界21位の国家の人口に相当すると言います。
 2015年だけでも、1,240万人の難民が発生しており、その深刻さをうかがい知ることができます。

 増大する難民が押し寄せた国々では、それらの移民に対して、温かく迎えるというよりも、憎悪が大きくなって、極端なジェノフォビア(外国人嫌悪現象)が起きています。

 難民として入った国で、すぐに働き口が見つかって生活が安定するということも難しい状況ですから、いろいろと犯罪に手を染める人も出てくる始末です。
 2016年、ドイツでは6カ月間で、142,500件の移民による犯罪が発生しています。こうなると、治安の問題と移民の問題が深く結び付いてしまうという状況が起きるわけです。

 難民問題を掘り下げていくと、いろいろと考えさせられることが多く、人類社会の貧困と紛争が解決されない限り、難民が発生することは避けられないという結論に至ります。

 シリア難民が、豊かなヨーロッパの国々(特にドイツ)を目指して行ったように、現在、中南米の貧困で政治が不安定な国(特に、グァテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス)からの不法に入り込む移民がメキシコ国境を目指す状態にあり、これを食い止めるために、アメリカのトランプ大統領は壁を建設すると主張して、米国議会はもめている状況です。

 難民を生み出す国は、当然、国内にいろいろと深刻な課題があり、人々はその苦境から逃れたいと思って、欧米の先進国を目指しています。

 根本的に考えれば、難民が出るような状態のない立派な国をつくることができれば、難民問題は解消するという論理になりますが、難民の発生理由に欧米諸国が直接、間接に関わっている場合が多く(例えば、シリア)、先進国の責任も問われているというややこしさがあるのも事実です。

 国を捨てて難民になる人々、難民が押し寄せて雇用対策や治安対策で頭を抱える先進国、このように難民問題は難民発生国と難民受け入れ国の双方で深刻な苦しみを抱え込んでいきます。