共産主義の新しいカタチ 126

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

管理・監視は悪で警察は敵か?
ミシェル・フーコー(上)①

 去る7月28日、熊本県で最大震度7の地震が起こり、38人が死亡し約7千人が酷暑の中避難生活を余儀なくされています。熊本では10年前も震度7の地震に襲われたばかりですが、改めて亡くなられたかたがたへ哀悼の意を表するとともに被災地の人々に心からお見舞いを申し上げます。

 今回の令和8年熊本地震や2年前の能登半島地震、東日本大震災(2011年)、阪神淡路大震災(1995年)など激甚災害や新型コロナ・パンデミック(2019年)でその都度指摘されてきたのは、政府・行政の対応能力。特に阪神と東日本という二つの大震災ではもっと政府対応が早ければ救える命は格段に増えたのではといわれます。その適切な対応を迅速に行えるようにすることが「緊急事態」「国家緊急権」についての考えです。

 さて、本連載は文化破壊の共産主義的思想系譜を人物中心にまとめてきましたが、今回から取り上げるのはミシェル・フーコーです。

▲ミシェル・フーコー(1926〜1984)

 フーコーといえば、今や「市民権」を得て「常識」のようになった「LGBT運動」の先駆けとなり「ゲイの聖者」とも目されている人物こそ、フーコーであり、いわゆる反「TERF(=トランス排除的ラディカル・フェミニスト)」、つまり「トランス女性」を女性スペースや女性の権利の枠組みから除外すべきとする考えを糾弾することを唱えるジュディス・バトラー米UCB(カリフォルニア大学バークレー校)教授に決定的影響を与えているのです。

 まず、このフーコーを研究する学者が、日常とは異なる緊急的状態を、どう考えているのかを紹介してみましょう。

フーコー学者の異様な「本音」
 フランス現代思想の「核」ともいえるのが、「構造主義」あるいは「ポスト構造主義」の立場です。一般的にフランスの実存主義思潮(実存哲学)の中心的存在だったJ・P・サルトルの思想と鋭く対立しました。

 構造主義を創始したレヴィ=ストロースが、文化的構造に着目し、「主体性の真理」を説くサルトルと論争を引き起こしたため、構造主義はマルクス主義べったりのサルトルの実存哲学とは異なった「新しい指標」と目されました。

 ですが、サルトルの論敵だったフーコーの思想は、サルトルのマルクス主義実存哲学との隔たり以上にレヴィ=ストロースと隔たっているのです。

 フーコーの著作、『監獄の誕生』『狂気の歴史』というタイトルにも表れているように、管理システムに対する糺弾が、フーコー思想の根底にあり、それを粉砕しようという姿勢が、やがて監獄解放運動(GIP)、同性愛者解放運動につながっていきます。元々フーコーは、高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリエル)での師であるアルチュセールや、『存在と無』を著した実存哲学者として知られたサルトルと同様にフランス共産党に籍を置きました。ただ、サルトルやアルチュセールほどには、フーコーはマルクス主義のドグマ(教義)と政党には拘りませんでした。

 フーコーの権力論は『監獄の誕生』以降本格化します。その『監獄の誕生』を軸としたフーコー哲学の入門書が、重田園江・明治大教授の『ミシェル・フーコー 近代を裏から読む』(ちくま新書)。ネットの書評を見ると、「難解なフーコー思想を分かりやすく解説」などと肯定的な評価が多い。が、重田教授の「本音」には、聞き捨てならない言説が散見されます。

(続く)

★「思想新聞」2026年8月15日号より★

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