世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

広がりを欠いた沖縄県民投票

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は2月18日~24日を振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 トランプ大統領、核実験ない限り北の非核化「急がず」と発言(19日)。安倍首相、トランプ大統領と米朝首脳会談に関して電話会談(20日)。「竹島の日」式典開催(22日)。トランプ大統領、米中貿易交渉進展を理由に関税引き上げ延期表明。交渉は継続(24日)。沖縄県民投票実施、辺野古移設の賛否を問う(24日)、などです。

 今回は沖縄県民投票を取り上げます。
 朝日新聞は25日の一面で、「辺野古『反対』72%」と大見出しで報じました。また「しんぶん赤旗」は、一面に「沖縄新基地 反対が圧倒的多数」と記しています。全県民の72%、圧倒的多数が反対という、いずれも「印象操作」に近いものです。

 実際は、広がりを欠くものであり、政府と米国への影響力は限定的と言わねばなりません。辺野古移設反対派の心配は、まず投票率でした。50%を切れば結果として「反対多数」と言っても説得力がなくなるからです。

 結果はギリギリの52.48%でした。直接比較はできませんが、沖縄県で行われた全県選挙(補欠選挙を除く)で最低だった2014年の衆院選(52.36%)並みの低い水準なのです。
 宜野湾市の松川正則市長は「投票率が半分だと、政府に移設断念を求めるには説得力が弱いのではないか」と指摘しました(「読売新聞」2月25日)。

 次に反対票が全県有権者数の4分の1を超えるかどうかということでした。県の投票条例では、そのラインが、投票結果を首相と米国大統領に通達する票数の基準としているからです。県の投票資格者総数は115万3591人、その4分の1は約29万人。反対票は43万4273票となりました。前回県知事選での玉城氏支持票39万6632票も超えています。

 しかし「圧倒的多数」には程遠いものです。投票資格者の総数約115万の半数をゆうに超えるものでなければ、県民の総意と言える結果とはならないのです。

 県民投票に対して、自民、公明、日本維新の会は自主投票で臨みました。読売新聞の出口調査によれば、投票した自民党支持者の中で「反対」が48%となっています。賛成派の結束とそのための「理論」武装の課題も浮き彫りになりました。

 国政選挙などの民主的な手続きでつくられた政府(内閣)にとって、国の平和と安全は最大の責務です。外交・安保は国の専管事項であり、米軍基地をどこに設けるかは、政府以外は認められないのです。

 県民投票の結果には法的拘束力はありません。反対派には普天間飛行場移設の代案がありません。中国の脅威に対する米海兵隊の「存在」の意味付けも間違っています。丁寧な説明の場を設け、その輪を広げていくしかないのでしょう。