魚谷さんの宗教講座 32

神道編➁
神道における神

ナビゲーター:魚谷 俊輔(UPF-Japan事務総長)

 神道は日本の風土から生まれた日本固有の民族宗教ですが、「神道」という言葉そのものは、もともと中国から伝わった中国語です。

 中国の文献におけるこの言葉の初出(しょしゅつ)は『易経(えききょう)』に見られ、「霊妙不可思議な自然の法則」という意味で用いられています。この言葉が古代に中国から伝わり、日本語になったのです。

 日本の文献におけるこの言葉の初出は『日本書紀』に見られます。
 「(天皇は)仏法を信(う)けたまひ、神道を尊びたまふ」(用明天皇即位前紀)、「(天皇は)仏法を尊び、神道を軽(あなず)りたまふ」(孝徳天皇即位前紀)というような形で登場するのですが、「仏法」は「ほとけのみのり」と読み、「神道」は「かみのみち」と読みます。
 用明天皇は神道を尊んだけれども、孝徳天皇は神道を軽んじたというような記録として出てきます。

 ここでは、「仏法」に対比して「神道」という言葉が使われていることに留意する必要があります。
 『日本書紀』は外国に向けての公的な歴史書なので、外来の宗教である仏教と対抗する形で、土着の信仰を意味する「神道」という言葉が用いられたわけです。

 『日本書紀』には「惟神(かむながら)は神道(かみのみち)に随(したが)うを謂(い)ふ」という記述もあります。
 「惟神」とは「神の御心のままであること」という意味であり、神々に由来する自然な在り方に従うこと、自然に即して生きることが神道の理想とされています。

 それでは神道における「神」とはいかなる存在なのでしょうか。
 江戸時代の国学者・本居宣長は神を「尋常でない霊威を発するもの」と定義しました。

 ここで、神道における神の特徴をまとめてみましょう。

①神の数は八百万:
 神道は、キリスト教やイスラム教のような一神教ではなく、多神教です。
 ここでいう八百万(やおよろず)とは、「非常に多くの」「無数の」という大ざっぱな数を表しているのであり、数学的な800万を意味しているのではありません。

➁神は姿を表さない:
 神は山川草木などの自然物に宿りますが、特定の姿を持ちません。

③神とは畏敬の対象:
 古代の日本人は、疫病や災害の発生は神の祟(たた)りであると考えていました。神は尊ばれる存在であると同時に、畏れられる存在でもあったのです。

④一定の土地と結び付く:
 神道には、神がその土地と結び付いて、その土地の「氏神」となるという考えがあります。超越的な一神教の神に比べると、特定の土地との結び付きが強いといえるでしょう。

(次回に続く)