2026.08.03 22:00

魚谷さんの宗教講座 26
仏教編㉖
日蓮宗
ナビゲーター:魚谷 俊輔(UPF-Japan事務総長)
鎌倉仏教の最後に現れたのが日蓮(にちれん、1222~1282)です。
日蓮は安房国(あわのくに、現在の千葉県南部)で漁師の子として生まれ、天台宗(てんだいしゅう)清澄寺(せいちょうじ)に出家しましたが、「法華経(ほけきょう)こそ真実の教え」という確信に至り、32歳で日蓮宗を開きました。

日蓮は日本の仏教史におけるカリスマ的かつ預言者的な人であり、最も迫害に遭った人です。彼は迫害によって何度も死にそうになります。
仏教では迫害のことを「法難(ほうなん)」といいます。日蓮は多くの法難に遭えば遭うほど、この道こそ正しい道であると確信していったという人で、日蓮のストーリーはまるで信仰者の鑑(かがみ)のようです。
日蓮は、自分こそ末法(まっぽう)の世に現れる法華経の行者、上行菩薩(じょうぎょうぼさつ)の生まれ変わりだと確信するようになり、自分の受けている法難も、法華経の中で予言されていると解釈しました。
日蓮は『立正安国(りっしょうあんこく)論』を著しますが、その内容は法華経を信じることによって初めて国が正しく立つということです。
彼は非常に強烈な信仰者であると同時に、非常に排他的な人でもありました。法華経のみが人々を救うとして、念仏(ねんぶつ)、禅(ぜん)、密教(みっきょう)などの他の教えを激しく攻撃しました。
日蓮宗の本尊(ほんぞん)は「文字曼荼羅(もじまんだら)」と呼ばれるもので、掛け軸の真ん中に「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう/なんみょうほうれんげきょう)」と書いてあります。
日蓮宗の教えの特徴は、浄土宗(じょうどしゅう)と比較することによってはっきりします。
浄土宗では阿弥陀如来(あみだにょらい)の恩恵によって救われると教えるわけですが、それは来世で救われるということです。浄土宗の教えは、亡くなる瞬間に阿弥陀如来がやって来て自分の魂を救ってくれるという、極めて来世主義的な傾向が強いのに対して、日蓮は「南無妙法蓮華経」を唱えることで、現世で救済される道を説いたのです。
日蓮宗では、個人だけでなく、国家や世界も法華経で救われるとします。
日蓮が1260年に著した『立正安国論』は、法華経のみが国を護(まも)ると主張し、鎌倉幕府に対して「日蓮宗に改宗せよ!」と迫ったのですが、これは幕府から黙殺されました。
日蓮が預言者的な人物であると言ったのは、当時さまざまな天変地異や蒙古(もうこ)襲来などの国難が起こりましたが、「その理由は人々が邪宗(じゃしゅう)を信仰しているからだ、自分の日蓮宗を信ずれば国は安泰だ!」と言った姿が、旧約聖書に出てくる預言者にそっくりだからです。
内村鑑三も、この日蓮を代表的な日本人の一人に挙げています。
日蓮系の教えの中から、日本の巨大な新宗教が出発しています。霊友会、立正佼成会、創価学会などがそうです。これらの新宗教は基本的には戦後の高度経済成長期に大きく教勢を伸ばした教団ですが、努力すれば自分の生活も世の中もどんどん変わって発展していくという当時の風潮が、現世における救済を説いた日蓮の教えと相性が良かったといえるかもしれません。
(次回に続く)