世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

ソロモン諸島のワレ首相、中国との安保協定見直しへ

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、720日から26日を振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 英国、アンディ・バーナム首相が就任(720日)。米国、大統領令で国防企業に中国排除を促す(20日)。防衛省、中国海軍が日本のEEZ(排他的経済水域)内で射撃訓練を行ったことを公表(21日)。ソロモン諸島のワレ首相が訪日して高市首相と会談(23日)、などです。

 7月23日から25日、ソロモン諸島のマシュー・クーパー・ワレ首相が日本を訪問しました。23日には高市早苗首相と会談しています。
 会談では、ソロモン諸島への開発協力として、30億円の円借款を含めた協力推進を図ることで一致し、人的交流や「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に向けた連携と共に「伝統的なパートナーと再構築」することを確認しました。
 ワレ首相は訪日直前に訪米し、ワシントンで米政府高官と会談しています。

 ワレ氏は24日、読売新聞のインタビューを受け、その中で中国との安全保障協定を見直す意向を表明しました。
 5月に就任したばかリですが、背景の一つに、76日になされた中国軍による原子力潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験があります。ソロモン諸島近くの太平洋にミサイルが着水したのです。
 監視機関によれば、中国のミサイルはソロモン、ナウル、ツバルの間の海域に着水したと見られています。

 2019年、ソロモン諸島は台湾との国交を断絶して中国との国交樹立をしました。さらに2022年、中国との安保協定を締結したのです。
 安保協定の内容の一つは、中国が軍や警察を派遣できるとするものでした。周辺の諸国や日米には、中国がソロモン諸島の軍事化を図っているとの懸念が広がりました。ところが中国軍によるSLBM発射により、状況は一変したのです。

 7月7日、ワレ首相はオーストラリアのアルバニージー首相とソロモン諸島の首都ホニアラで首脳会談を行いました。
 ワレ氏は、ソロモン諸島とオーストラリア二国間関係の深化の確認とともに、中国によるSLBM発射実験を批判し、「太平洋島フォーラム(PIF)の議長として、駐ソロモン諸島中国大使に強い抗議を表明した」と述べています。

 ソロモン諸島がこれまで中国の最も緊密なパートナーの一つであったことを踏まえると、ワレ首相の中国批判は注目に値します。
 ワレ氏は、「中国はソロモン諸島の良き友人だが、これは友人のやることではない」「私たちは太平洋地域での大陸間弾道ミサイルの発射実験を望んでいない」と主張し、そして「私たちの友人でいたいなら、脅すな」と言い放ったのです。

 読売のインタビューの中でワレ首相は、今後日本や米国、オーストラリアなど「伝統的なパートナー諸国」との連携を重視する考えを明らかにしました。また、「中国は大事なパートナーだ」とした上で、見直しは政府内で検討中であると述べています。そして「ソロモン諸島が地域の不安定要因になることは決してない」とも語っています。

 日本にとっても重要な政策転換です。今後を見守っていきたいと思います。



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