2026.07.21 17:00

世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
台湾統一の責任者・王滬寧氏が訪朝、その狙いは?
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、7月13日から19日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
米中央軍、ホルムズ海峡の再封鎖を発表(7月13日)。中国のGDP(国内総生産)の減速明らかに、4~6月前年比を国家統計局が発表(15日)。中国の台湾統一工作責任者・王滬寧(おう・こねい)氏が訪朝、金正恩(キム・ジョンウン)氏と会談(16日)。改正皇室典範が成立(17日)。中国・上海で「世界AI(人工知能)大会」開幕、習近平氏が演説(17日)、などです。
6月8日~9日に習近平主席が訪朝し、北朝鮮に対する評価の見直しを行動で示しました。その後、北朝鮮の朴泰成(パク・テソン)首相が7月10日から12日まで中国を訪問しており、その時、中国側は異例の厚遇をしました。習氏の接見をはじめ、李強首相、蔡奇党書記らが対応しています。
さらに7月16日、中国の王滬寧・政治協商会議主席(政治局常務委員)が訪朝し、金正恩総書記と会談したのです。その狙いは中国による台湾統一戦略の共有とみなければなりません。
王滬寧氏は、習近平政権の台湾政策を理論面・統一戦線面で統括する中心人物です。党内序列4位として台湾工作領導小組の副組長を務め、習氏に次ぐ台湾政策の最高責任者であり、対台湾政策の「思想設計者」「統一戦線の司令塔」なのです。
王氏は、30代で上海の名門・復旦大学の法学部教授になり、1980年代から90年代にかけて、鄧小平の改革・開放政策が政治面にもたらしたさまざまな影響の把握に力を投入しました。天安門事件の総括のためです。
そして国民生活は劇的に向上しつつありましたが、その一方で一連の改革により、結果として地方の隅々までを支配していた中央政府が、その実質的な支配力を失うことにつながってしまったと結論付けたのです。
彼の思想は、当時の共産党指導部が再び中央集権化を進め、強い態度で権力を行使すべきだという考え方を進める上での理論的支柱となっていきました。
さらに習近平総書記が進めた「反腐敗」闘争の理論的支柱は、実は王氏でした。1990年代初め王氏は、汚職が政治的にどんな影響をもたらすかについて掘り下げて考え、上層部の腐敗は政権への信頼を傷つけ、組織の下部で起きる腐敗よりもはるかに深刻な問題だと指摘したのです。
王氏の思想的信念の裏付けとなっているのは、80年代終わりに米国に留学していたことでした。
米国留学で新しい発想、希望を得ることはなかったとしつつ、米国の個人主義と私欲を痛烈に批判しました。そして米国の価値観は「堕落した価値観」であると断言するに至ったのです。自由と民主主義といった「自滅を招くような思想」に基づく米国のシステムはいずれ危機に陥ると述べています。
王氏は中国政治協商会議議長であり、統一戦線部の責任者です。台湾弁公室はその下にあるのです。台湾統一のための環境づくりの責任者が北朝鮮との連携の前面に登場してきたことを、このたびの訪朝は示しているのです。
中国は今、対日工作に力を注いでいます。北朝鮮が決定的な役割を果たすことができるとみているのでしょう。
過去の事例があります。1945年から1949年10月まで、中国共産党は国民党と闘いました。その結果、国民党は破れ、台湾に逃れて中華民国を存続せざるを得なったのです。ここで決定的な役割を果たしたのは、北朝鮮と中国東北地域の朝鮮人だったのです。負傷兵の治療や武器・弾薬の共有などを行いました。
中国は今、北朝鮮の抱き込みに入っているといえるでしょう。
中国の対外政策において実現しようとする当面の目標は日本けん制です。現在一番の障害となるのが日本であると中国は認識しているのです。そして大目標は台湾統一なのです。
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