世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

日米に決意と覚悟を見せつけた、中国SLBM公開発射

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、76日から12日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 中国軍、戦略原子力潜水艦からSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射(7月6日)。米国務省、中国のSLBM試射に懸念を表明する声明発表(6日)。茂木外相、高市首相の代理でNATO(北大西洋条約機構)首脳会合に出席(7日)。米・イランが再び攻撃応酬(8日)。NATO首脳会議、ウクライナに対する揺るぎない支援で合意(8日)。米、イランと協議継続同意(10日)、などです。

 中国はやはり、目標を2027年に置いているのかもしれません。目標とは、中台統一の実現のことです。
 必要な要件の一つは、対米「A2/AD」(接近阻止・領域拒否)戦略を実行する能力の確保です。

 中国海軍は76日、戦略原子力潜水艦から太平洋の公海に向けて訓練用の模擬爆弾を搭載したSLBMを発射したと発表しました。
 実は、中国海軍にとって公式な発表は初めてのことでした。これまでは非公開が基本だったのです。

 今回の長距離試験は、太平洋の公海に着弾させるコースをたどりました。その過程で、切り離されたロケットの一部が落下する可能性がある海域に近い国々に事前通知していました。国際法に合致するものであったことを示し、その透明性を演出したのです。

 発射された弾道ミサイルは、米本土を射程に収める射程1万キロ超の「JL-3」(巨浪3)とみられています。

 中国は7月に入り、1日には「中華民族団結進歩促進法」(団結促進法)を施行し、続いてSLBMの公開発射を行いました。
 一連の行動により私たちは、中国が「質的に新しい脅威」の存在となったことを理解しなければなりません。

 いくつかの問題が含まれていますが、何よりも中台統一への決意と覚悟を内外に示したといえるのです。
 団結促進法は国内外の分離主義的主張を許さず、ミサイル発射は有事において「対抗」する米国の軍事行動を抑止する能力を誇示したのです。

 戦略兵器における最大の脅威は潜水艦、それも原子力潜水艦であるといわれています。それは存在を探知する困難性の増大であり、核攻撃の到達手段が多様化することにより、抑止構造の変化を迫るものです。大陸から発射されるICBM(大陸間弾道ミサイル)よりSLBMが脅威となるのです。

 中国の核戦力が実践的運用段階に入ったことを示す歴史的転換点となる出来事(新法施行とSLBM発射)が続きました。
 今の日本のミサイル防衛では、SLBMを迎撃がすることはほぼ不可能です。

 繰り返しになりますが、発射地点が不明、飛翔経路が多様、そして高度が高く終末(落下最終段階)速度も極めて速く、日本のイージス艦の迎撃能力やミサイル防衛システム・PAC-3(パトリオット能力向上型3)では迎撃が困難なのです。

 中国は今回の発射地点を公表していませんが、南シナ海・海南島の東側の海域からとみられています。中国軍は20249月、ここからICBMを太平洋の公海に向けて発射する訓練を実施しているのです。

 中国は2010年代から、南シナ海の岩礁を埋め立て人工島にして飛行場やミサイル発射基地を建設してきました。完全に軍事基地化しつつあります。周辺諸国との領有権争いを抱えながら、武力による威嚇を行いながら進めてきたのです。

 2016年、中国が主張する南シナ海の領有権の主張は国際法違反であるとハーグの仲裁裁判所は判決を下しています。
 しかし中国は完全に無視。南シナ海を越えて太平洋に出ていく潜水艦の「道」を開こうとしてきたのです。ほぼ完成段階に入っています。

 中国の核戦力は「2025年度版中国軍事力報告」(米国、国防総省)によれば、2024年時点で核弾頭数が「600発台前半」に達し、2030年までに1000発を超える軌道にあると分析・評価しています。

 今できることは日米連携のさらなる質的強化です。
 戦略・戦術の共有確認を再度行うことが必要です。中国は波状的に圧力をかけてくると思われます。
 この国難を越えなければなりません。



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