スマホで立ち読み Vol.42
『統一思想へのいざない(原相論編)』11

木南章良(統一思想研究院首席研究員)著

(光言社・刊『統一思想へのいざない〈原相論編〉』〈20251120日初版第1刷発行〉より)

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三、頭翼思想

 統一思想は「頭翼思想」とも表現されます。これは、右翼でも左翼でもなく、より高い次元で両者を包容する思想という意味です。右と左を頭の立場から包容するのです。「右翼」、「左翼」という言葉は、フランス革命当時に議長席の右側に保守的な人々が座り、左側に革新的な人々が座っていたことから来ている(*45)といわれますが、文鮮明(ムン・ソンミョン)・韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁はさらに霊的に歴史を遡って、イエス様の十字架の時の右の強盗と左の強盗にその起源がある(*46)と説明しています。今から2千年前に生きたメシヤ、イエス様を受け入れた人は、右の強盗だけでした。3弟子、12弟子ですら、自分の命が危ないとなると逃げてしまいました。ですから、右翼は霊的背景が神に近いというのです。

 今の世界でも右の民主主義は神を認め、左の共産主義は神を否定します。イギリスのチャーチル元首相(Sir Winston Leonard Spencer Churchill, 1874-1965)は19471111日の下院演説で「この罪と苦悩の世界で、今まで多くの政治体制が試されてきたし、これからも試されるだろう。誰も民主主義が完全だとか、すべて賢明だなどと主張できないであろう。実際、民主主義は最悪の政治形態といわれてきた。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが」と言いました。民主主義は今までの歴史上の政治形態の中では一番優れたシステムですが、まだまだ欠点があるという意味でしょう。

 統一思想は、左の共産主義からは憎悪心、闘争心、物質主義を取り除き、右の自由主義からは利己主義、集団利己主義を取り除いて、神と人類の宿願である理想世界を実現しようとする思想です。

 マルクスの共産主義の試みは、完全な失敗でした。しかし、それはマルクス主義理論が間違っていたということであって、共産主義が訴えた公平、平等、正義という目標自体は、人類共通のもので普遍的な理想です。その実現は、マルクス主義ではない、新しい理念によってなされるのです。

 一方、民主主義社会においては、利己心を中心とした自由競争を基調とする、アダム・スミス(Adam Smith, 1723-1790)の経済学に基づいて初期資本主義経済が成立しましたが、そこには富の不平等と労働者の疎外という問題が生じました。企業は資本家の私有のもとに置かれ、労働者は企業の側のメンバーとはみなされませんでした。労働者は契約によって会社に雇われただけの被雇用者であり、労働者に支払う賃金は単に生産費の一部とみなされました。したがって不況の時には、不必要な施設を減らすように、労働者は簡単に解雇されたり、レイオフ(一時解雇)されたりしました。そのような資本主義において、当然ながら労働者は疎外され、経営者に対する反感、企業の業績に対する無関心が生じ、ストライキ等が頻繁に起きるようになりました(*47)。資本主義に欠点があることはマルクスのみならず、現在においてもフランスの経済学者トマ・ピケティ(Thomas Piketty, 1971-)が『二十一世紀の資本』で指摘しています。

 アダム・スミスの「見えざる手」の思想、つまり個人の自己利益追求が社会全体の利益、ひいては豊かな社会の実現につながるという思想は、極端にいえば、資本主義に倫理は必要ない(*48)ということです。しかし、統一思想では、搾取や抑圧の問題、労使間の問題の根本的な解決は、家庭倫理に基づいた企業倫理が確立するときにのみ可能だとしています(*49)。その基本は神のもとの人類一家族思想、つまり資本家と労働者が搾取・非搾取の関係ではなく、兄弟姉妹同士であるという考えです。

 文鮮明・韓鶴子総裁は、利己主義は右翼だけではない、右翼も左翼も根本的動機が利己主義から抜け出せていない(*50)と説明しています。これは共産主義国である中国でも大きな貧富の格差がある事実を見てもうなずけます。人間の「利己心」の克服、人間の堕落の問題を克服し、利己主義を乗り越えて、より高い次元で右翼と左翼を包容しようとするのが頭翼思想の目標なのです。

【注釈】

45 新村出編、『広辞苑』第三版(東京:岩波書店、1983)、「右翼」、「左翼」。

46 世界基督教統一神霊協会編、『神様の摂理から見た南北統一』(東京:光言社、2000)、524頁。

47 李相軒、『頭翼思想時代の到来:共産主義を超えて』、鮮文大学校統一思想研究院/日本統一思想研究院編(東京:光言社、1997)、8788頁。

48 2016年度文化功労者 岩井克人先生 インタビュー『高度化する資本主義社会では、信頼と倫理により支えられる仕事が増えていく』」、国際基督教大学(ICUHP2025年5月27日閲覧)、https://www.icu.ac.jp/news/201611_katsuhito_iwai.html

49 『新版 統一思想要綱』、394頁(倫理論)。

50 天一国経典『平和経』、1212頁。

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 次回は、「心と体の二重体」をお届けします。


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