2026.05.19 17:00

世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
米中首脳会談は米国が圧倒
対イラン再攻撃か
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、5月11日から17日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
米国司法省、カリフォルニア州のアルケディア市長を中国のスパイ容疑で訴追(5月11日)。日米財務相会談、東京で開催(12日)。米中首脳会談、北京で開催(14日、15日)、などです。
5月14日から15日、米中首脳会談が北京で行われました。
日本の大手メディアの評価は、ほとんど中国側が優勢だったというものです。例えば新聞の見出しですが、「中国ペースに『対等』と自信」(16日、朝日)、「乏しい会談成果」(16日、読売)、「守勢の米国 成果とぼしく」(16日、産経)、などなどです。
会談の冒頭、習近平氏が台湾問題に触れ、「適切に処理できなければ両国は対立・衝突し、中米関係を極めて危険な境地に追い込むことになる」と警告しました。
脅しともいえるものでしたが、トランプ大統領はその発言に対して、何も話しませんでした。この事実をもって、あたかも話せなかった、言い返せなかったかのように報じられているのです。
しかし反論すれば、米中関係の悪化は必至、同意すれば結果として日米関係が傷つきます。何も話さないのが正解であり中国を押さえ込むことになるのです。
大手メディアの評価はあまりにも偏っていました。事実は逆、米国が「圧倒」した会談だったといえるのです。
米国政府が14日、首脳会談後に発表した声明の要点は以下のごとくです。
*米企業による中国市場へのアクセス拡大や中国企業による米産業への投資拡大など経済協力を強化する方法を協議
*中国による米国産農産物の購入を拡大
*ホルムズ海峡の開放を維持すべきと合意
*習氏は同海峡の軍事化や通行料徴収に反対
*習氏が米国産原油の購入拡大に関心
*イランの核兵器保有に反対で合意
*米国へのフェンタニル流入阻止をさらに前進
などであり、台湾問題は含まれていません。
トランプ氏は、イラン問題解決のために中国から支援を受けようとしていったのではありません。
一部メディアの報道では、行き詰ったトランプ氏が習近平氏に頭を下げてイランに働きかけることをお願いしに行ったかのように報道していますが、これも事実ではありません。
トランプ氏は、イランへの物的支援を提供しないという確約を得ることに集中し、再確認したのです。この確認をもって米国は、イランに対する軍事作戦計画(濃縮ウランの確保とイランからの運び出し)を実行しようとしています。
イラン自らが動かなければ、トランプ氏は行動するでしょう。大切なことはイランが核兵器を保有することを阻止することなのです。それには中国も同意しました。
今回の会談で、特に注目すべき点があります。米中両政府がAI(人工知能)の安全管理の在り方について対話を始める方針を確認したことです。
背景には、米国がAI技術において圧倒的優位に立っている現実があります。中国がもうすぐ米国にキャッチアップするという予測が報じられることがありますが、事実とは異なります。
今日、AIは軍事の中核技術になっています。この点が米中間競争の本質なのです。
米メディアによれば、米国のイランへの攻撃で、AIがリアルタイムで標的や攻撃の優先順位を決め、最初の24時間で1000カ所を攻撃し、最高指導者ハメネイ師と幹部の排除を実行したのです。
1月のベネズエラ、2月のイラン、共に中国が提供した防衛システムが簡単に破られてしまったのです。
今年4月には、ネットシステムの弱点を見つける能力が極めて高い、米企業・アンソロピックの「クロード・ミュトス」の登場が話題になりました。もしミュトスを悪用したサイバー攻撃が行われ金融機関のシステムが麻痺(まひ)すれば、世界経済の混乱を招きかねないのです。
ベネズエラ、イランへの軍事攻撃には「クロード・ミュトス」的なAIが使用されたのではないかとみられています。
重要なことは、米国が「圧倒」しているということなのです。
さらに重要なことは、会談を終えて米国に帰る15日夜、大統領専用機の中でトランプ氏が高市首相に電話をし、約15分間会談が行われ、米国からの報告を共有したことなのです。
米国は、アンソロピック社のクロード・ミュトスへの接続権を日本に認めたようです。すでに英国には認めています。
世界は今後、デジタル分野で明確に米中に分かれていくでしょう。
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