ほぼ5分で読める統一運動 90
怨讐を越えて二つの国と世界・人類をつなぐ道

稲森 一郎

 韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁は自叙伝の中で、日韓トンネルプロジェクトについて以下のように述べています。

 「日本の九州には、唐津(佐賀県)という港湾都市があります。玄界灘に面しているこの地域は、特に唐津焼が有名ですが、壬辰・丁酉の乱(文禄・慶長の役)の時に日本に連れていかれた朝鮮の陶工たちの優れた技術によって発展したという、胸の痛い歴史を持っています。
 私たちは1980年代からここでプロジェクトを開始していましたが、2016年の秋、私はこの地を訪れ、人類のための重要なミッションの一つを再スタートすることを決意しました。それは、韓国と日本をつなぐ海底トンネルを完成させることです。唐津はその海底トンネルの出発地であり、到着地なのです」(『人類の涙をぬぐう平和の母』、214ページ)

 韓総裁は、このプロジェクトの持つ意味について、「私たち夫婦はずっと前から、すべての大陸を一つに結ぶ平和の道を構想してきました。問題は、アメリカのアラスカとロシアを隔てるべーリング海峡と、韓国と日本の間に広がる玄界灘です。この二カ所に道を造ることができれば、人類は一つにつながっていきます」(同、214ページ)と強調します。

 人類を一つにするために、ベーリング海峡と玄界灘に道を造るというのです。
 このような話を聞いて、誰もが複雑な反応を示します。

 ベーリング海峡に道を造ることは、具体的に米国のアラスカとロシアのシベリアをつなぐということであり、玄界灘に道を造ることは日本と朝鮮半島をつなぐということです。

 米国とロシア(旧ソ連)は、かつて冷戦状態にあった宿敵同士です。日本と韓国(朝鮮半島)は、歴史的に怨念に満ちた関係です。
 だからこそ、そこに道ができれば世界が変わるということであり、人類が一つになるためには、どうしてもベーリング海峡と玄界灘に道(海底トンネル)を造る必要があるというのです。

 イギリスとフランスは、ドーバー海峡に海底トンネルを通すことによって、百年戦争(ジャンヌ・ダルクの戦争)の恨みを越えて、非常に深い関係を構築しました。

 トルコでは日本の大成建設が二つの海底トンネルを建設し、世界を驚かせました。
 一つは、マルマライ・プロジェクト(鉄道) (2013年開通)の建設です。海峡を挟んで欧州とアジアをつなぐ約13.6kmの鉄道トンネルを、日本の大成建設がトルコ企業と共同企業体(JV)で施工し完成させました。

 マルマライ・プロジェクトにおいては、世界で最も深い海底沈埋(ちんまい)トンネルの開通を成功させ、長方形の沈埋函と円形トンネルを接続する高度な技術が使われました。

 さらに、ユーラシアトンネル(アブラシャ・トンネル/2016年開通)では、アジアとヨーロッパをつなぐ世界初の2層式自動車専用海底トンネルの建設を実現し、全長14.6km、海底区間5.4kmの工事を見事に成し遂げました。

 アブラシャ・トンネルは、渋滞緩和を目的とし、約12億ドル(約1400億円)を投じて建設され、韓国企業も関与しました。
 すでに技術的には日本が世界の最先端を走る格好となっており、韓国企業とのコラボも体験済みです。

 玄界灘を越え、海底トンネルで日韓が結ばれると、日本も朝鮮半島も活気に満ちあふれ、人もモノも技術も活発な相互交流となって、大きな経済発展の流れができます。
 何よりも人々の間から憎しみの感情が消えて、平和へ向かう未来が期待できるのです。