共産主義の新しいカタチ 88

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

テクスト論とオープンソースの衝撃
ロラン・バルト(下)③

自発性を重んじる開かれた世界観
 このように(前回を参照)「自発的」か「自発的でない」かは、ある意味で社会の「自由度」をはかる重要な「目安」ないし「指標」(メルクマール)となっています。

 しかも、レヴィ=ストロース的な「贈与」という文化人類学的な考え方からすれば、自らの「仕事」に対して「労働としての対価」を求めない「オープンソース」の発想は、まさに「下部構造としての経済活動」という「マルクス主義の常識」の埒外にある「贈与」に当たるといえるでしょう。というのも、別掲(文末に引用)に示すように、ロラン・バルトは「秩序」という語に「警察的」「権威」「弾圧」といった極めて政治的な価値観を援用して記述しています。それはフランクフルト学派の立場とも重なっています。

 その意味で、バルトはやはり「マルクス主義というイデオロギー」「階級闘争というドグマ(教義)」の呪縛から逃れられなかったのではないでしょうか。

 今日的な「著作権の全能性」に対し明確に「否」を唱えたのがバルトというなら、「自分の作品が繰り返しコピーされ、享受されることを『誇り』に思うべきであり、それ以上の金銭的なリターンを望むべきではない、という新しい発想」(『寝ながら学べる構造主義』)は、既にマルクスの呪縛から解き放たれていると言えるかもしれません。

 これがマルクス主義の立場なら、こう考えるでしょう。本来なら自分が汗を流した「労働」の結果、音楽や図像、プログラムやソフトウェアなどの作品が生まれたとすれば、当然その「労働」に見合った対価を獲得せねばならない。そうでなければ、それらはそれを利用する人々により「搾取されている」と捉えることになるでしょう。

 しかし、「コピーライトの全能性」を持つ作者とその作品を享受する利用者との関係というのは、「搾取と被搾取の関係」「階級闘争」に還元できません。ルカーチ流に「階級意識」から生まれ出るものは、法で縛ろうと自由意思に委ねようと結果は変わりません。これが「宿命論的世界観」の限界で、それを超克するのが「開かれた自由な世界観」といえるでしょう。
 フランクフルト学派のスタンスとも重なっているように思われます。

---

【権力・体制の「エクリチュール」】
 本来的にマルクス主義的なエクリチュール(マルクスやレーニンのエクリチュール)と勝利を収めたスターリン主義のエクリチュール(人民民主主義のエクリチュール)とを列挙することができるし、また、確かに、トロツキー主義的なエクリチュールとか、たとえばフランス共産主義のものである戦術的なエクリチュール(《人民》ついで《健全な民衆》の《労働者階級》に代えての使用、《民主主義》とか《自由》とか《平和》などという辞項の故意の両義性)とかが存在する。

 それぞれの体制が自分のエクリチュールを所有しているということに疑いはないが、そのようなエクリチュールの歴史は、まだこれから作成されるべきものである。エクリチュールは、語り(パロール)の顕著にアンガジェした形式であって、貴重な両義性によって、権力の存在と外見とを、すなわち権力がそれであるものと権力がそれであると思われたいと望んでいるものとを、同時に含んでいる。

 そんなわけで、政治的なエクリチュールの歴史は、社会的な現象学の最良のものとなるであろう。例えば、〈王政復古時代〉は、階級的なエクリチュールを練り上げたのであり、そのおかげで、弾圧は、古典主義的な《自然》からひとりでに出現する断罪として、即座に持ち出されていたのだ。

 すなわち、要求を掲げる労働者は、つねに《個人》とかストライキ破りとか《穏健な労働者》とかであって、裁判官たちの奴隷根性は、そこでは、《司法官の温情あるいは心遣い》となっていた(今日、類似の手法によって、ド・ゴール主義は共産主義者たちを《分離主義者》と呼んでいる)わけである。

 了解されるとおり、ここでは、エクリチュールは良心として機能しているのであって、行為の弁明にその現実の保証を持ち出すことによって、事象の始源とその最も遠く離れた転変とを詐欺的に合致させることを使命としているのだ。しかも、エクリチュールに関するこのような事象は、すべての権威的な体制に固有のものであって、警察的なエクリチュールと呼ぶこともできるようなものである。例えば、《秩序》という語の永久に弾圧的な内容は周知の通りなのだ。(『零度のエクリチュール』)

「思想新聞」2025年11月1日号より

ウェブサイト掲載ページはコチラ

【勝共情報】
国際勝共連合 街頭演説「第二のゾルゲの暗躍を許すな!」2025113日 渋谷駅

LINE勝共ラシンバン】
友だち追加、お待ちしております。
友だち追加はこちら↓