2025.10.18 22:00

家族の心を結ぶ 4
『グラフ新天地』2004年5月号に掲載された特集記事を、編集部が再編集してお届けします。
〈家族は合わせ鏡〉
自分が変われば相手も変わる
思いを言葉で表わす
親子、夫婦、嫁姑(しゅうとめ)——。それぞれの間で複雑な問題が生じることもありますが、その原因はとても単純です。それは、お互いが別の人間であることを忘れてしまうことです。
どんなに子供を愛している親でも、子供の気持ちを思いどおりにはできません。どんなに親孝行の子供でも、親の心をのぞき込めません。愛し合って結婚した夫婦でも、言葉にしなければ思っていることは伝わりません。いわんや、もともと赤の他人であり、今までの生活習慣もまったく異なる嫁と姑では、当然、考え方も異なります。
ですから、自分の思いを適切な言葉で表現することが必要です。お互いのことがよく分からないからこそ、理解しよう、理解されようと努力し、慎重に言葉を探すのです。そこから「思いやり」が生まれてくるのです。
良い点を探して褒める
人間は誰しも、完璧ではありません。いくつも欠点があるものです。あら探しをしようとすれば、いくつでも見つけることができます。それをあげつらい、批判したり、無理やり欠点を変えさせようとしても、関係を悪化させるだけです。
それよりも、相手の良い点を探し出し、積極的に褒めてあげることです。
褒められた方も、素直に喜びましょう。人を批判することは簡単ですが、褒めることは難しいものです。自分を褒めてくれたその努力に感謝することが大切です。
家族とは、合わせ鏡のようなものです。
自分の前にかざした鏡に、後ろからもう一つの鏡をかざして映し合わせると、自分の後ろ姿が見える——。それが合わせ鏡です。
相手の姿の中に、自分の「見えない後ろ姿」を見せてくれるのが家族です。気に入らなかった相手の言葉や行動は、実は自分自身の欠点なのだと、捉えるべきなのです。
ですから、家庭内の問題を解決するには、自分を変えることに尽きるのです。自分が変われば、自分を映し出してくれる鏡、すなわち相手も変わっていくものなのです。
〈実践〉
「家族を喜ばせる喜び」を味わおう
自分の気持ちを適切な言葉で表現すること、相手の良い点を探して褒めること、そして自分から変わろうとすること。この3点さえ努力すれば、これまで離れていた家族の心は、必ず結ばれていきます。
「理屈は分かるけど、実際はなかなか…」とおっしゃるかたに、具体的な実践方法をご提案します。
ノートを1冊ご用意ください。そのノートに、問題を抱えている相手との1日のやりとりを、次のように記入していきます。
ノートを開いて左のページには、相手に語ってしまった悪い言葉、抱いてしまった悪い思いを書きます。右のページには、相手を褒めた言葉、良いと感じたことなどを書き込みます。
初めは左のページだけが、文字で埋まるかもしれません。その文章を読むたびに、「自分はなんてひどいことを言い、思ってしまうんだろう」と、自己嫌悪に陥ることもあるでしょう。しかし、相手もあなたの言動に対して、同じように苦しんでいるのです。相手の立場に立って自分を客観的に見るには、こうして文字に表す方法が最も効果的です。
自分を知り、日々このような努力を続ければ、だんだん左のページに空白が多くなり、右のページの文字が増えていきます。人を褒めた自分の言葉を改めて読み返すことで、気持ちも明るくなります。そして、「家族を喜ばせる喜び」に気付くでしょう。
右ページに多くの記入ができるよう、毎日チャレンジしてみてください。
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「家族の心を結ぶ」は、今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。