ほぼ5分で読める勝共理論 96
台湾有事④
「一つの中国」と台湾

編集部編

「中国」とは?
 「台湾」というのは、実は国の名前ではありません。
 東京オリンピックでも台湾と紹介されていましたが、台湾の正式な国の名前は「中華民国」です。

 中華民国には100個ぐらいの島がありますが、その中でも一番大きい島の名前が台湾島といいます。台湾島には富士山よりも高い山があります。その山のある島の名前を取って台湾と呼んでいるだけなのです。

 中国にはかつて清という王朝の時代がありました。清王朝の後にできた国が中華民国です。
 ちなみに日本は中国と日中戦争で戦いましたが、その時の相手が中華民国でした。

 日本は連合国軍のポツダム宣言を受諾しましたが、ポツダム宣言を策定した時の中国は中華民国だったのです。
 つまり中華民国は、その時代の中国の政府として世界が認めていたということです。

 ところが第2次世界大戦が終わった後、中国では内戦が始まりました。クーデターが始まったのです。
 中国政府は日本との戦いで消耗していたので、かなり弱っていました。

 中国共産党は、ソ連から援助を受ける中、内戦の結果、ついに中国政府を倒してしまいました。こうしてできたのが中華人民共和国であり、1949年に今の中国となったのです。

 中華民国政府は共産党軍に追われて最終的に台湾島に逃げました。
 アメリカが台湾に味方したこともあり、なんとか台湾島は守られました。

 その後もしばらくは、国際社会では中国といえば「中華民国」のことを指していました。つまり「中華人民共和国は本当の中国ではない」と考えられていたのです。
 国連(国際連合)の常任理事国としての中国も中華民国でした。

台湾は中国の一部?
 ところがその後、アメリカの立場が大きく変わりました。
 アメリカは1955年からベトナム戦争に突入し、大変な苦戦を強いられていました。犠牲者もたくさん出ました。それでアメリカは中国(中華人民共和国)に接近したのです。
 中国がベトナム戦争に共産主義陣営としての参加をやめれば、アメリカに有利になると考えたからです。

 それでアメリカは、その時の条件として「一つの中国」を支持することにしました。

 「一つの中国」とは、「中華人民共和国を中国の唯一の合法的政府」と承認して、「台湾は中国の一部である」と認知するものです。

 アメリカが一つの中国を支持する立場に立ったので、日本も同じ立場を取り、日本と中国は国交を回復しました。
 国連でも、中国とは中華民国を指すのではなくて、中華人民共和国を指すことに決定しました。安全保障理事会の常任理事国も中華人民共和国であることに決まりました。

 こうして台湾を「中華民国」という正式名称で呼ぶ国はほとんどなくなり、「台湾」という地域名で呼ぶようになりました。つまり、中国というのは中華人民共和国を指し、中華民国と呼んではいけないということになったわけです。日本においてもそうです。

 そのような背景から、中国にとって台湾は中国の一部なのだと言っているのです。
 アメリカも日本もいったんそういう立場を認めたのです。

 だから中国が台湾に軍事侵攻をしても、それは戦争ではなく、単なる治安維持である、単なる国内問題に過ぎないということになるわけです。
 それで中国は堂々と武力で台湾を侵攻する、制圧すると言っているのです。

 中国は、国際社会が批判さえしなければ台湾を武力で制圧しても何の問題もないという立場を取っています。そしてそれが中国にとって最大の悲願なのです。習近平氏が歴史に名を残すためにはそれを実行するのが一番いいわけです。

 日本では麻生太郎副総理(2021年当時)が、「台湾有事が起きたら存立危機事態に関係する」と話しました。これは、「台湾は中国の一部ではない」とはっきり言っていることになるので、実はかなり大胆な発言でした。

 もちろん中国は、麻生副総理の発言はとんでもない。絶対に許さない。内政干渉だと言って批判しました。
 つまり中国は、国際社会さえ反発しなければ、いつでも台湾を武力侵攻するつもりがあるということなのです。

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