スマホで立ち読み Vol.38
『“人さらい”からの脱出』22

小出浩久・著

(光言社・刊『“人さらい”からの脱出 違法監禁に二年間耐え抜いた医師の証言』〈2023年11月20日改訂版第2刷発行〉より)

 スマホで立ち読み第38弾、『“人さらい”からの脱出』を毎週水曜日(予定)にお届けします。
 2年間にわたる拉致監禁後、「反統一教会グループ」の一員として活動した経験のある筆者。そんな筆者が明らかにする、「脱会説得」の恐ろしい真実とは。

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1 15カ月間の監禁生活

四、新潟での説得、逃げ回る生活の始まり⑦

 夜8時を過ぎると、よくT氏が来た。彼は『原理講論』『御旨と世界』、それに関連する聖句、統一教会でキリスト教と統一原理の比較研究をしている書籍などをよく読んでいた。そして、その矛盾点やあら探しなどをよくしていた。

 ある時「『原理講論』では聖書を研究したと書かれているが、聖書と『原理講論』は言っていることが全く逆じゃないか。旧約聖書はイスラエル民族の信仰の失敗をテーマに書かれているが、統一原理では違うように解釈している」と言ってきた。

 そこで私は(東京のマンションで旧約聖書は読み終えていた)「そんなことはない。たとえば旧約聖書はいかにイスラエル民族の指導的人物が神への信仰を立て(信仰基台)、いかにして民族全体としての秩序を整えてきたか(実体基台)が一貫して書かれてある。つまり『原理講論』の主要なテーマである“メシヤのための基台”“復帰”について書かれているではないか」と自信をもって反論すると、「こんなに原理と聖書を学んでいる食口(シック/統一教会員のこと)と会ったのは初めてだ」と言って、退散してしまった。

 当然、私の聖書に対する知識は不十分極まりないものであった。しかしそれでも、T氏が出会った元信者よりは、少しは理解が深かったのであろう。実際、私の出会った元信者のほとんどは、「文鮮明(ムン・ソンミョン)は聖書のいうメシヤではあり得ない」と断言しながら、その方自身は肝心の聖書を学んでいなかった。

(続く)

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 次回は、「逃げ回る生活の始まり⑧」をお届けします。



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