ほぼ5分で読める勝共理論 86
安倍政権の功績③
日本のプレゼンスを高めた安倍政権

編集部編

 7月8日、安倍晋三元首相の命日(没年67歳)を迎えました。
 安倍元首相への追悼の思いを込めて、6回に分けて「安倍政権の功績」について考えてまいります。

安倍総理とトランプ大統領
 今回は、安倍政権が日本のプレゼンスを高めたことについてお伝えします。

 まず、安倍総理が辞めた後、各国の首脳が安倍氏を高く評価しました。
 これは普通のことではありません。なぜかというと、仮に日本の次のリーダーが安倍総理と正反対の考えを持つ人になった場合に、安倍総理をあまり高く評価すると、そのことがその後の関係性においてマイナスになってしまうからです。

 こうした懸念はあったとは思いますが、それでも各国の首脳は安倍総理に対して高い評価を送りました。

 そして何よりも大きかったのは、アメリカのトランプ大統領との関係が良かったことです。トランプ氏は安倍総理が辞めたと聞いて、「最大の敬意を表したい。とても残念だ」と言いました。

 面白い話があります。トランプ大統領の元側近で、トランプ氏の秘密を暴露しているジョン・ボルトンという人物がいますが、このかたが「安倍総理の辞任はアメリカにとってもとても痛いことだ」と語りました。

 その理由は、「トランプ大統領が安倍総理の話しか聞かなかったからだ」というのです。それだけトランプ大統領が安倍総理を強く信頼していたということです。

憲法9条は真の平和主義か
 さて、安倍氏が総理大臣になるまで、日本がこれほど国際社会での存在感、つまりプレゼンスを示したことはありませんでした。

 確かに日本は経済成長を果たして、世界第2位とか第3位の経済力を持つようになりました。
 しかし国際社会では、日本は相変わらず影響力がありませんでした。世界は欧米を中心に動いていたのです。つまり国際社会のルールは、欧米諸国の利害関係で作られていたということです。

 日本のプレゼンスが低かった最大の原因は、日本が自分の国のことしか考えない態度をずっと取ってきたからです。突き詰めると、この原因は憲法9条にあります。

 憲法9条は「平和主義」だといわれます。筆者も学校でそう習いました。しかし本当にそうなのでしょうか。

 例えば、日本のすぐ近くで悲惨な戦争が起きたとします。たくさんの人が殺されました。それでも日本は何もできません。憲法9条があるからです。
 日本ができることは、「遺憾だ」と言ったり、戦争がすっかり終わり、全て落ち着いた後に出かけていって道路を造ったりするぐらいです。

 これが憲法9条です。これを平和主義というのでしょうか。

 憲法9条の本質は「一国平和主義」ということです。
 日本は軍隊を持ちません。もし戦争が起きたらアメリカに守ってもらいます。その間に日本は経済成長だけ、平たく言えば、お金もうけだけを考えます。もちろん世界で紛争が起きても日本はタッチしません。
 極論すると、「自分たちは平和のために血も汗も流さないが、周りの人たちが築いてくれた平和の上でお金もうけはする」ということです。

 1991年に湾岸戦争が起きました。独裁国家であるイラクがクウェートに侵攻しました。世界中の国が多国籍軍を結成して、侵攻をやめさせた戦争です。
 この時、日本は130億ドル、日本円にして約2兆円の支援をしましたが、自衛隊は派遣しませんでした。派遣すると憲法9条に反するのではないかという恐れがあったからです。

 しかしこの理論は世界には全く通用しませんでした。国際社会は、日本は金だけを出して何もしないのかと言って厳しく批判したのです。これが世界の現実です。

 もちろん同盟国であるアメリカも日本に対して強い不満を持っていました。
 日本で戦争が起きたらアメリカの兵士が血を流して日本を守らないといけません。しかし日本はアメリカを守ってあげないのです。すぐ隣でアメリカ人が血を流しているのに、助けもせず見捨ててしまう。そんな国をアメリカ人が命を懸けて守る必要があるのか…。そんな意見が強かったのです。

「積極的平和主義」と価値観外交
 こうした状況で、安倍総理は「積極的平和主義」というスローガンを掲げました。
 日本は日本のことだけを考えるのではなくて、積極的に平和をつくるために貢献するのだという単純な話です。

 そして国際平和のために、自衛隊が積極的に活動できる環境を整えました。もちろん自衛隊員も過酷な海外任務を果たしてきました。

 安倍総理は、価値観外交に基づいて積極的に自由主義の国々と連携を深めてきました。
 安倍総理が海外を単独訪問したのは81回に上ります。2018年の時点で日本の総理として歴代最高回数になっていました。日本の総理大臣として安倍総理が初めて訪問したという国もたくさんあります。

 それでここからが重要なのですが、安倍総理は行く先々の国で価値観外交について説明しました。

 「日本は普遍的価値観を共有する国とは連携を深めます。そうでない国とは連携を深めません」と言ったのです。

 貧しい国からは歓迎され、中国と関係を深めるヨーロッパの国々に対しては中国の脅威について詳しく説明しました。もちろんトランプ大統領に対してもそうです。
 このようにして世界の国々が、安倍総理のビジョンに賛同するようになりました。

 こうして日本は、国際社会のルール作りにおいても重要な役割を果たすようになりました。
 日本の外交では日米同盟が最も重要ですが、日米関係もこれまでになく緊密になりました。しかも単にアメリカに追従するだけではなく、日本独自の立場も強調してきました。

 これは、日本が70年以上も前の戦争の反省だけをしていては絶対にできなかったことです。
 安倍総理は、国内では「軍国主義者だ」とか「戦争をしたがっている」というように、さんざん批判されました。

 しかし安倍総理は日本の平和のためには一体何が必要なのか、そして世界の平和のために日本はどうやって貢献できるのかということを真剣に考えてリーダーシップを発揮していたのです。これは本当に大きな功績だったのです。

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