2025.06.23 22:00
facts_3分で社会を読み解く 73
瓜生崇著『統一教会・現役二世信者たちの声』を読んで
ナビゲーター:魚谷 俊輔
瓜生崇(うりう・たかし)氏の著作『統一教会・現役二世信者たちの声』(法蔵館)が5月23日に発売された。
筆者は彼の著書『なぜ人はカルトに惹かれるのか』(法蔵館、2020年)も読んだことがあるが、彼は「反カルト」の立場の中では少し特殊な人物だ。
「反カルト」の立場の本は、宗教に対する無理解や批判を土台としていることが多いのだが、瓜生氏自身が親鸞会はやめたが浄土真宗はやめることができず、同じ浄土真宗のお寺の住職をやっている、という経歴からも分かるように、基本的に宗教性のある人なのだ。
「カルト」に入信するということは、「マインド・コントロール」という言葉だけでは説明できないものがあるという認識も、基本的には筆者と一致している。
この本の最大の功績は、家庭連合の現役二世信者たちの声に真摯(しんし)に耳を傾け、それを歪曲(わいきょく)することなく、ありのままに世に伝えようとしたところであろう。
それは、多くのメディアが描くようなステレオタイプ化された「宗教2世」の描写ではなく、彼ら(彼女ら)のリアルな姿がよく表現されている。これを世に伝えるだけでも、この本を出した価値はあるのではないかと思う。
この本には「拉致監禁」というワードがそのまま登場する。
もちろん瓜生氏は反カルト側ではそれを「保護説得」と呼んでいることはしっかり述べているが、家庭連合側でそれを「拉致監禁」と理解していることをことさらに否定したり、勝手に言葉を書き換えたりはしていない。
そのあたりは、認識や立場の違いを超えて、インタビュー対象の言葉を正確に伝えている点で高く評価できる。
本書は家庭連合二世に対するインタビューだけで構成されるのではなく、瓜生氏自身の考えを述べた部分もあるし、かなり挑戦的な物言いもしている。
彼の主張全てに同意することはできないが、これは立場や考え方の違いとして仕方のないことなのだろう。
その部分が完全に一致する必要はなく、対話の余地があるということが重要だ。
最後の山口広弁護士のインタビューは、聞き慣れた「山口節」を聞かされている感じだが、「反統一教会」という立場を崩さずに本書を出すには、全体のバランスとしてこうするしかなかったのであろう。
帯に「外にも内にも届かない、ほんとうの声」と書いてあるが、家庭連合二世の声が外部の社会に届かないというのは、主にマスコミ報道の在り方に原因がある。
一方で、教会内部にも届かないというのは、ジェネレーション・ギャップの故に、こうした二世たちの本音が、いま教団を運営している一世たちに届いていないということが言いたいのであろう。
一部の一世信者たちにとっては、「二世の本音ってこうだったのか」と驚くことがあるかもしれない。
筆者は普段から二世たちと接する機会が多いので、彼らの発言は耳慣れたものであり、大きな驚きはなかった。
二世たちのリアルな姿がよく表現されていると筆者が評価したのは、普段接している二世たちと、本書のインタビュー内容の間に大きな齟齬(そご)がなく、イメージどおりだったためだ。