共産主義の新しいカタチ 62

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

「構造主義」に道拓く「記号学」を創始
フェルディナン・ド・ソシュール(上)①

▲フェルディナン・ド・ソシュール(ウィキペディアより)

現代思想の源流の一つとなった「記号学」
 フランス現代思想の代名詞「構造主義・ポスト構造主義」。その「思想的源流」の一つと言えるのがスイスの言語学者フェルディナン・ド・ソシュール(18571913)の「記号学」という考え方です。ポストモダン思想がなぜ「差異」というものにこだわるのか──。それを「記号学の父」、ソシュール思想に遡って求められます。

 「ポストモダン」という言葉が、当然のように現代思想に導入されるようになった背景には、「構造主義」ないし「ポスト構造主義」が「現代思想の旗手」として登場した点が指摘できます。
 その「構造主義」を最初に展開したのがクロード・レヴィ=ストロースで、そのレヴィ=ストロースの思想も、実は言語学において決定的な影響を与えたフェルディナン・ド・ソシュールの「記号学」(または「記号論」)にその多くを負っており、ソシュールはマルクスやニーチェ、フロイト、フッサールなどと共に現代思想の一潮流を成しています(下図の「主要現代思想系統図」を参照。フロイトの上にソシュールがきています)。

画像をタップすると拡大してご覧になれます

 直近ではあまり声高に言われなくなった思想的潮流、「構造主義・ポスト構造主義」。しかし、19601970年代に世界同時多発的な学生紛争などによる「革命・政治の季節」を醸成したのが、「マルクス主義&実存主義」であったとすれば、その「挫折」による「ノンポリの時代」的背景から、1980年代に一世を風靡したのが、構造主義思潮でした。

 特に日本では「ニュー・アカデミズム」と呼ばれ、栗本慎一郎『パンツをはいたサル』、浅田彰『構造と力』、中沢新一『チベットのモーツァルト』などが社会現象となり、構造主義思潮「ブーム」の一翼を担ったのが、「記号学」でした。

弟子が没後まとめた『一般言語学講義』
 ソシュールは、フランスのユグノー貴族の系統を受け継ぐ旧家の長男として、宗教改革者カルヴァンの「お膝元」、スイスのジュネーヴに生まれました。ソシュール家の父祖モンジャンはフランスのソシュールを領地とする貴族でしたが、息子の代に新教徒(ユグノー)側に立ちスイスに亡命し、その子孫はジュネーヴに定着。名だたる学者の家系として知られ、フェルディナンの父アンリも昆虫学の権威と呼ばれた生物学者でした。

 ソシュールが天才言語学者として注目されるようになったのは、彼が21歳の若さで書いた論文『インド・ヨーロッパ諸語における母音の原初体系についての覚え書』でした。この論文は、印欧語族のもとになる祖語の時代に、現代では表記されなくなった音が含まれていたのではないかと推論したもので、「比較言語学史上の金字塔」とも評価されています。

 彼はパリ時代にフランスの最高学府「コレージュ・ド・フランス」の言語学正教授のオファーがありましたが、フランス国籍取得が就任の条件だったため、亡命貴族の末裔らしい筋の通し方でジュネーヴ大学教授となったのです。

 ソシュールは意外にも生前、専門的論文の他はまとまった著作は出版しませんでした。しかし、ジュネーヴ大学での3期にわたる言語学の講義録(弟子が編集)により、言語学という専門分野を超え後世への決定的な影響を与えることになります。

(続く)

「思想新聞」2024年4月15日号より

ウェブサイト掲載ページはコチラ

勝共情報
国際勝共連合 街頭演説「日米関税交渉の覚悟~米国か中国か、日本の針路を決断すべき時」2025428日 東京駅

LINE勝共ラシンバン】
友だち追加、お待ちしております。
友だち追加はこちら↓