共産主義の新しいカタチ 59

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

「装置」としての文化概念説く
ブロニスワフ・マリノフスキー③

▲ブロニスワフ・マリノフスキー(ウィキペディアより)

文化を3次元の有機体と捉える
 マリノフスキーの文化理論の第一の特徴は、「文化の縦深的構造論」です。彼は文化全体を、物的次元、行動的次元、並びに精神的次元の3次元からなる有機体と考えました。文化の三次元説は、「文化は二つの基本的な側面《一連の製作品と慣習の体系》に区分される、よく組織された統合体」と、二次元としても記述。

 彼の文化論の第二の特徴は、「人間は生物界の中の一つの種という生物学的事実」を起点としていることです。生物は、個体維持のため食物を摂取し、種族を維持するために生殖も必要です。ところが人間は他の動物とは異なり、生物学的な要因だけで生存し生活を営むのではなく、生物学的要因が、「文化により加工され改編される」のです。

 例えば生殖という現象は人間の場合、男女の交合で説明されるより婚姻制度システムとして現れます。

文化は巨大な条件づけの装置と規定
 かくしてマリノフスキーは「文化とは巨大な条件づけの装置」とする「文化装置論」を唱えることになります。

 訓練、技術伝達、規範教育など、本能と学習が一体化し、生物学で説明できない人間の行動が生み出される。文化は、人間の生物学的基本的要求を満足させるための「装置」であり「手段」であると考察。
 そして、装置としての文化を、技術・組織・言語等のシンボル・宗教・芸術の五つに区分し、これらを「第一次的な生物学的要求の文化的満足」と称しました。

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 技術は、理性により展開する知の体系を基礎とした、経験に準拠する論理的行為ですが、個人的行為ではなく、組織された人間集団──家族や親族、村落、国家機構との関連で、初めて可能になります。

 また、言語などシンボルによる抽象的思考と伝達作用により、個人の体験を人類共通の知識に体系化し、複雑な組織に制度化したりできるようになります。

 理性や論理で満足できない要求、死や不幸などの不安を克服する装置として、情緒に準拠した宗教や呪術を位置づけています。

 感覚刺激、筋肉や神経の生理学に基礎を置く芸術・スポーツも、重要な役割を果たす文化的装置です。

 以上のような第一次的な生物学的要求の文化的満足を制御するために、第二次的ないし派生的な至上命令が課せられていると、マリノフスキーは考えます。

 「第二次的満足」には、経済組織、規範制度、政治体制、教育機構の四つの原理をなす知識、情緒、あるいは感覚刺激の機能なども含まれます。
 第二次的装置は、人間の文化に普遍的なものであり、「第一次的装置を制御する至上命令」としての機能を持っているというのです。いかなる人間社会でも、経済組織つまり生産・分配・消費の制度が存在します。経済組織は、第一次的装置の技術と対応し、技術に違った側面から普遍性を与えるとします。

 組織社会と対応するのは規範制度で、根本は協力であり、共同生活のため個人行動を制御する制度です。それは成文化された法制ではなく、生きて働く法、慣習、道徳、作法などを含み、規範制度は強制と権力の行使を示唆し、集団に組織の力が用意されて政治体制をつくると見ています。

 至上命令の最後は、「文化の存続を守るもの」の考えで、「文化はシンボル装置を通し、世代から世代へ伝承される累積的な業績。この共通の業績を伝達する手段こそが教育機構」とします。以上がマリノフスキーによる文化論の概略であり、上のチャートに表現されるものです。

「思想新聞」2024年3月15日号より

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