共産主義の新しいカタチ 58

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

「装置」としての文化概念説く
ブロニスワフ・マリノフスキー②

▲ブロニスワフ・マリノフスキー(ウィキペディアより)

師フレーザーと宿敵ラドクリフ=ブラウン
 ダーウィニズムの影響に基づく進化論的な考え方は、生物学にとどまらず、文化や社会の歴史的研究にも現れました。

 ところが、自由意志を認めない機械的「生物学的決定論」とも言える素朴進化主義への批判・反省からより綿密な進化主義が登場。
 その代表が、マリノフスキーの師だったJG・フレーザー(18541941)で、「原始人から出発し、何千年ないし何百万年もの諸制度に至る方法で、人間社会の歴史を組み立てるのは、想像力の飛翔という価値をもつかもしれぬが、学問研究として何の意味も持ちえない」と素朴進化主義を批判。

▲J・G・フレーザー(ウィキペディアより)

 代表作『金枝篇』の中心主題は、「宗教と神話」で、莫大な資料が収集され、百科全書の趣きを持っています。彼は一見互いに異なる宗教現象を分析し、その底流に人間として共通の希求が潜んでいると主張。例えば、文明人が「科学」に求めているのと同じ機能を、未開人は呪術に求め、フレーザーにとって、機能から見れば、「呪術の進化したものが科学」というのです。

 さて、「機能主義」に関して付け加えるべきは、マリノフスキーの学問上のライバルとなる英国の人類学者アルフレッド・ラドクリフ=ブラウン(18811955)です。彼はマリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』と同年の1922年に、『アンダマン島人』を発表し、野外調査による民族誌により機能主義理論を展開、これもデュルケーム理論を出発点としたのです。

▲アルフレッド・ラドクリフ=ブラウン(ウィキペディアより)

 文化・社会の個々の要素や現象を全体との関係から切り離し、恣意(しい)的に文化要素の複合をつくって互いに比較し、時間的な前後関係に並べ変えることが、学問の主眼であった進化主義や歴史主義に、マリノフスキーとラドクリフ=ブラウンは強く反対。

 人類学研究で重要なのは、文化や社会の時間的な経過ではなく、現存の制度や慣習の機能を、統合体としての文化または社会との関連において明らかにすることでした。

貴族の家系に生まれ物理学から転身
 マリノフスキーは、ポーランドのクラカウで物理・数学で学位取得も挫折。後に渡英し、ロンドン経済学院(LSE)に入学。

 人類学のメッカで、フレーザーや南太平洋の諸民族の専門家セリグマン、婚姻史の研究者ウェスターマークらに師事したマリノフスキーは、1914年、英連邦内の豪州へ野外調査の旅に出て、結果的に彼は6年間にわたり豪州に滞在、三つの重要な調査を行いました。

①ニューギニアのマイルー族の調査
②トロブリアンド島人の調査
③19171918年の、同地方の調査でした。

 この調査のうち、マイルー族調査は「マイルーの原住民」として人類学の学位論文となりました。

 しかし、最も名声を高めたのはトロブリアンド諸島の調査を元に著された『西太平洋の遠洋航海者』です。ここからロンドン大学の人類学教授となりました。

ラドクリフ=ブラウンとの差異
 マリノフスキーがデュルケームの影響下に唱えた機能概念は、個人次元での「有機的衝動に対する満足」や「組織的行為の統合結果」で、集団次元での「集団が社会全体内で占める位置」で、慣習・制度の面からは、それらが「文化の全般的性格によって決定される」ことが「機能」だとします。

 同じ機能主義の影響にありながら、マリノフスキーがラドクリフ=ブラウンと異なるのは、「機能を考えるにあたって個人の次元にまで下りてきている点」です。

 デュルケームは、「集団表象は個人の総和以上のもの」で、個人の意識や動機では理解できないとします。社会を社会次元のみで見る構造的立場をラドクリフ=ブラウンは継承し、他方マリノフスキーは、個人次元まで降ろしたのです。

 人類学的研究対象を社会に限定した(社会人類学の)ラドクリフ=ブラウンに対し、マリノフスキーは、人類学の対象は「文化」であるとし、自らの学問を「文化人類学」と呼んだのです。

 マリノフスキーによる文化の概念は「道具、消費財、種々の社会集団の憲章、観念や技術、信念、慣習からなる統合的全体」です。

(続く)

「思想新聞」2024年3月15日号より

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