ほぼ5分で読める勝共理論 76
スパイ防止法④
西新井事件

編集部編

日本人に成り済ます
 今回は、北朝鮮による拉致事件の中から「西新井事件」について説明します。

 西新井事件というのは、今から40年ほど前に起きたことなのですが、日本に密入国した北朝鮮の工作員が日本人に成り済まして、十数年間日本人として生活していた事件です。

 実は日本の警察がこの人物の捜査を始めたところ、他の組織もその人物を追っていることが分かりました。

 調べてみると、一つは韓国のスパイ機関、もう一つは韓国の捜査を警戒する朝鮮総連(在日本朝鮮人総聯合会)の人たち、さらにもう一つが、アメリカのCIA(中央情報局)に雇われていた日本の探偵社でした。

 分かってみると、その人物はCIAが注目する極東地域の大物工作員だったのです。そしてその人物は、危険を察知してマレーシアに出国しました。そこで姿を消してしまったのです。

 この人物のコードネームは「朴(パク)」です。本名はチェ・スンチョルです。
 日本に密入国した後に土台人と会って、松田忠雄という名前で東京都の西新井に住み始めました。それで西新井事件といいます。
 地元の工場で働いたのですが、仕事をする様子も大変真面目だったので、誰もスパイだとは思いませんでした。

 その後、朴は小熊和也さんという男性に成り済ましました。
 朴は小熊さんをだまして戸籍を手に入れると、病気がちの小熊さんを入院させてパスポートや運転免許証を手に入れました。
 小熊さんとして韓国などを行き来して、スパイの連絡網をつくったのです。

 その後、小熊さんは病気で亡くなってしまいます。それで朴は、今度は小住健蔵さんという人物の戸籍を手に入れました。そうして貿易会社をつくって、頻繁に海外に出かけました。
 小住さん本人の行方は今なお分かりません。北朝鮮に連れていかれたのかもしれませんし、消されてしまったのかもしれません。

蓮池薫さん夫妻を拉致する
 朴はある女性と親密な関係になって子供も生まれました。そして子供たちを連れて、日本中を旅行しました。そこで撮った写真はスパイ活動に使われました。

 ある時は能登半島でテントを張って1週間もキャンプをしました。子供たちを海岸線に立たせて写真やビデオを撮ったのですが、これを工作員の密入国に使ったといわれています。

 そして朴は1978年、新潟県の海岸で、蓮池薫さん夫妻を拉致しました。
 朴は、船の上で二人に向かって、「こんなことをして申し訳なかったが、仕方がないことだ。おとなしくしていれば、危害は加えない」と言ったそうです。

 朴が姿を消した後、警察は朴の会社を引き継いだ在日朝鮮人がこれまたスパイであることを突き止めました。

 その男は深夜のラジオ放送で北朝鮮の指令を受けていました。
 しかしスパイ防止法がないため、その男を捕まえる理由がありません。それで警察は、その会社の登記に虚偽の記載があることを見つけて、公正証書原本不実記載容疑で家宅捜索を行いました。これで何とか、スパイ活動の手掛かりをつかんだというわけです。
 以上が西新井事件です。

 実はこういった北朝鮮のスパイは、今も日本国内にたくさんいます。日本がスパイ天国だからです。
 北朝鮮はミサイル開発を進めていますが、その技術の90%は日本から盗んだものです。北朝鮮からアメリカに亡命した人物が、アメリカの議会でそう証言しているのです。

【関連書籍】

◆『よくわかる勝共理論~日本と世界の平和のために~』(光言社)

▲詳細はこちらをタップ