青少年事情と教育を考える 38
高校の入学願書から性別欄を廃止

ナビゲーター:中田 孝誠

 高校の入学願書から「男」「女」の欄を廃止─。
 大阪府と福岡県は、公立高校の入学願書から性別を記入する欄を廃止することを決めました。来春の入試からなくなります。性別を記入することに抵抗を感じる性的少数者、LGBTの受験生に配慮するというわけです。性別を記入しなくても試験の成績には関係ないということでしょう。ただし、入学願書と一緒に出す調査書には、在学している中学校の教員が記入するということです。

 文部科学省は、性同一性障害(トランスジェンダー)などLGBTの児童・生徒にきめ細かな対応を行うよう学校現場に要請しています。今回の大阪府と福岡県の決定は、それに応えたという意味合いもあるでしょう。

 こうした性別欄については、LGBT法連合会という団体が制定を目指しているLGBT差別禁止法案の中に、「性的指向および性自認を理由とする、わたしたちが社会で直面する困難のリスト」として「学生証に性別欄がある」「卒業証明書や成績証明書に性別欄がある」ことを挙げています。性別欄があることで性同一性障害であることを知られ、不利益を被るというわけです。

 また、リストにはこの他、「学校の制服や体操服などが戸籍上の性別で分けられたため、苦痛を感じ、不登校になった」「男女別の授業や行事、部活動などで、性自認と戸籍等の不一致のために自分のやりたいことを選択できなかった」などがあります。さらに就労や家族関係、相続などの面で、同性カップルとの関係が認められず、遺族補償や所得税申告、財産相続などで不利益が生じると書いています。

 前述の文科省の通知では、該当する児童・生徒とは信頼関係を築いて悩みや不安を聞く姿勢を示したり、LGBTを授業で扱う場合は集団指導と個別指導を分けたり、発達段階を踏まえて慎重に対応することを求めています。実際、そういう方針で対応をしている学校もあります。

 ただ、リストにあるようなことを全て「差別」として廃止すべきだとなると、大きな問題があります。なぜなら、就労やカップルに関係する制度の多くが、男女の婚姻(法律婚)をベースに設計されているからです。これは、男女の婚姻(法律婚)が子供を産み、健全に育てていく上で重要だから法的に保護しているわけです。万一、これらが差別を生んでいるとして廃止ということになると、子供の養育などにも混乱が生じることになりかねません。

 今回は入試での性別欄の廃止という例ですが、仮に入試はこれで良かったとしても、入学すれば男女の性別による授業や行事などが多くあります。ですから、こうした問題は一律に廃止するというより、それこそ個別に、子供との信頼関係の中で慎重に対応すべきではないでしょうか。