愛の知恵袋 37
人生の最終目的は何だろうか

(APTF『真の家庭』147号[1月]より)

松本雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

 新年おめでとうございます。この一年が皆様にとって明るい年となりますよう心からお祈りします。さて、年頭に当たって、一つの言葉をかみしめてみたいと思います。

「人間は、その人が考えているものになり、人格はその人の思考の集大成である」
ジェームズ・アレン(イギリスの作家1864-1912)

人生には目的があるはずだ

 人生とは何なのでしょうか。そして私達の人生の”目的”は何なのでしょうか。ほとんどの人がその答えを持たないままに、日々の生活に追われて生きているのが実情かも知れません。

 人間は貧者であれ富者であれ、等しく同じゴールを目指しています。それは言うまでもなく”死”です。多くの人は「死ねば全てが終わりだ」と考えて、生きている時を楽しく過ごすことのみに腐心しています。

 死んだら無になると考える人は、「人生に特別な意味などない。あっても、せいぜい子孫を残すことか、何か後世に役立つ実績を残すことぐらいだろう」と考えています。

 しかし、かくも精緻な肉体組織と、かくも高度で深遠な精神性を持ってつくられた人間の送る一生に、もし、「なんの目的もない」とすれば、それはあまりに不自然であり、不合理であると感じざるをえません。そう考えれば、我々の人生には、必ずや何らかの大切な目的があるはずなのです。

三つの人生の目標

 一般的に考えられている人生の目標は、大きくは三つあるように思えます。第一は、「幸せになること」。家族や友人と親密な情関係を結び、余暇を楽しく暮らし、幸福を満喫することです。

 第二は、「仕事で社会に貢献すること」。各自に与えられた才能を磨き、個性を発揮して、自分ならではの働きを通して人々のために貢献し、評価されることです。

 第三は、「良き子孫を残すこと」。結婚して子供を産み、愛情を注いで育てあげ、より良い子孫として残すことです。

 大概の人は、この三つのどれかに比重を置いて生きているのではないでしょうか。

 第一の目標、「幸せになる」と言う夢は誰もが一生追いかけていることですが、それを本当の意味で達成するためには、第二と第三の分野、つまり、「仕事と家庭」という二つの世界において成功することが必要です。

 人間には、”能力の分野”と”愛情の分野”があります。それが具体的に展開されるところが、”仕事”と”家庭”という場です。

 仕事の分野で自分の才能を存分に発揮できれば、人々に尊敬され感謝され、大きな喜びと生き甲斐を感じることができます。また同時に、結婚して家族をつくり、夫婦や親子として愛し、愛されるという情的満足を味わうことができなければ、どんな社会的成功も虚しいものになってしまいます。そういう意味で、仕事も家庭も、人生においては幸・不幸を左右する重要な要素であることに間違いありません。

もう一つの人生の目標

 しかしながら、以上の三つの目標は、実は人生の最終目的だとは言えないのです。人生の最終的な目的は、もっと高いところにあり、先の三つの目標は、その最終目的を達成するために必要な過程的要素だと言えるでしょう。

 人生の最終目的。それは、自身の”人格の成長と完成”にある。私はそう考えています。人間には心と体があります。私達は、美容・健康・スポーツなどに時間を割いて、体の美や長寿や快感を追求しますが、所詮、肉体は有限です。従って、人格完成の道においては、心の成長こそが重要であることは言うまでもありません。心の鍛錬と成長は死ぬまで続けられ、霊魂は永遠性を持っているからです。

 その心には、知・情・意の三つの分野がありますが、知識において優れた人、実績で優れた人よりも、愛情において優れた人こそが最も万人から慕われ尊敬されるのをみれば、”人格の核心は愛情にある”ということが分かります。

 とすれば、人格完成というのは、”愛情において成熟した人間になる”という事になります。儒教が「仁」の道を説き、仏教が「慈悲」を説き、キリスト教が「愛」を説いてきた事をみてもそれが分かります。

自分の人格は自分が創る

 もう一度、ジェームズ・アレンの言葉に耳を傾けてみましょう。

 「私達は、心の中で考えたとおりの人間になります」

 「気高い思いは気高い人を作り、低俗な思いは惨めな人を作ります」

 「人間を目標に向かわせるパワーは、『自分はそれを達成できる』という信念から生まれます。疑いや恐れは、その信念にとって最大の敵です」

 つまり、私達が人格の成長と完成を願うなら、「真の愛情に満ちた人間になろう!」という強い信念と目標をもって、日々の生活の中でそれを実行すればよいのです。神様が与えて下さった自然万物を愛し、自分のまわりにいる人達の為に生きる生活です。

 今、あらためて自分の人生の最終目標を確認しながら、この一年を出発しましょう。