青少年事情と教育を考える 35
家庭的環境で育つということ

ナビゲーター:中田 孝誠

 10月は厚生労働省が定めた「里親月間」です。

 里親制度は、さまざまな事情で実の親と暮らすことができない0歳から18歳までの子供たちを、家庭的な環境で養育するという制度です。

 「家庭での生活を通して、子どもが成長する上で極めて重要な特定の大人との愛着関係の中で養育を行うことにより、子供を健やかに育てます」(厚生労働省ホームページ)という意味があります。

 虐待などの理由で乳児院や児童養護施設などで暮らす子供は約3万人。その中で、里親に委託されている子は約6500人、里親になっているのは約4000人です。委託率(児童養護施設や乳児院など全体に占める割合)は2016年の時点で18.3%です。

 2016年に児童福祉法が改正され、「家庭養育優先」を原則にすることが定められました。そこで子供たちが家庭的な環境で育つことができるよう、里親委託を拡大しているわけです。

 委託率は年々上がっていて、過去10年で人数、割合とも2倍になりました。しかし、先進国と比較すると、まだまだ低いのが現状です。委託する施設との信頼関係の問題、実の親が子供を取られるのではないかと不安に思う、といったことも進まない一因です。里親委託しても四分の一は関係がうまくいっていないともいわれています。

 ちなみに厚生労働省は、愛知県、静岡市、福岡市の取り組みを、里親委託が進んでいる事例として紹介しています。

 子供を家庭的環境で養育するということでは、養子縁組(特別養子縁組)もあります。こちらは原則6歳未満の子を養子に迎える制度です(普通養子縁組は実の親との親子関係は残しますが、特別養子縁組は戸籍上も実の親との関係を断ち、実子と同じ関係になります)。

 子供たちの養育を守る上で、家庭がいかに重要な役割を担っているかを私たちは改めて自覚する必要があると思います。