青少年事情と教育を考える 34
道徳教育で「家庭」を教える

ナビゲーター:中田 孝誠

 道徳が教科となり、今春から小学校で教えられ、来春には中学校でも行われるようになります(教科名は「特別の教科 道徳」)。

 これまでの道徳授業は、ともすると人物の気持ちを読み取るだけに終わり、実践につながらないと言われることがありました。

 そこで今回の教科化では、「考え、議論する道徳」を目標にして、自分で主体的に考え、日常の行動、道徳的な実践力につながるようになることを目指しています。

 道徳の学習指導要領には、「善悪の判断」「自由と責任」「相互理解、寛容」「社会正義」など、教える項目が書かれていますが、その中に「家族愛、家庭生活の充実」という項目もあります。

 これは、「父母、祖父母を敬愛し、家族の幸せを求めて、進んで役に立つことをすること」(小学5・6年)、「父母、祖父母を敬愛し、家族の一員としての自覚をもって充実した家庭生活を築くこと」(中学)というように、自分が今暮らしている家族、家庭を大切にすることをテーマにしています。各社の教科書も、家族への感謝などを考えさせる話を掲載しています。

 そしてもう一つ考えたいのは、道徳教育は生き方について考えを深め、道徳的な心情や実践の意欲を育てるものだということです。

 人格を完成し、幸せな人生を築く具体的な実践力を持つためには、将来、結婚して夫婦、親となり家庭を築く可能性があること、そのためにどんな人間になることが望ましいかを考えさせることが大切ではないでしょうか。

 こうした話をすると、「家庭観の押し付け」といった批判が一部の人たちからなされます。「クラスに離婚した家庭の子がいるので話せない」という教師の声も少なくありません。
 もちろん、教える側は言葉を選ばなければなりません。それでも父母から命をもらったから自分が今生きているということを伝えながら、将来どのような人生を選択するか、自分が親になったらどうするかを考える機会を持つ必要があるのではないでしょうか。