世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

対北政策、溝深まる「日米」と「朝、韓、中、ロ」

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 10月1日から7日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 ノーベル賞「生理学・医学賞」を京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授が受賞(10月1日)。第四次安倍内閣が発足(2日)。米議会上院、ブレット・カバノー氏の最高裁判事就任を承認(6日)。米ポンペオ国務長官が訪朝、金正恩党委員長と会談(7日)、などです。

 今回はポンペオ氏の訪朝を取り上げます。
 ポンペオ氏の訪朝はこれで4回目となります。金正恩朝鮮労働党委員長と昼食を挟んで3時間半、話し合いました。
 正恩氏は昼食会で「両国にとって良い未来を約束するとても素晴らしい日です」と述べ、ポンペオ氏は「ご招待に感謝します。今朝の会談はとてもうまくいった」と笑顔で応じました。しかし実際は、協議前進のポーズに終わったと言わねばなりません。

 会談の合意点は二つです。
① 2回目の米朝首脳会談を早期に実現すること
② そのための実務者協議を立ち上げる
というものです。

 両国の対立点は明確です。
 北朝鮮は、終戦宣言をしなければ非核化措置に進むことができないとし、対する米国は、終戦宣言より核開発の全容申告をまず行うべき、申告があって初めて非核化の工程表ができる、というものです。

 ポンペオ氏は訪朝前の6日、安倍首相と会談しました。そこで安倍首相は、北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動をとらない限り、朝鮮戦争の終戦宣言や国連安保理決議による制裁の緩和に応じるべきではない、との考えを伝えたとみられます。

 韓国政府は、米国は終戦宣言に応ずるべきであるという姿勢を明確にし始めています。文在寅大統領は、「政治的宣言」に過ぎないとして、「在韓米軍の駐留には全く影響がない。停戦体制は維持される」と述べています。

 しかしハリス駐韓米国大使は、「一度宣言してしまうと、新たに戦争を始めない限り引き返せない」と明言しています。終戦宣言は、米韓合同軍事演習の中止とは違って、本来、不可逆的であるからこそ、北朝鮮は終戦宣言にこだわっているというわけです(読売新聞10月4日)。

 北朝鮮の非核化を巡って、北を支援し制裁を緩和すべきとする側は中国、ロシア、それに韓国となりつつあります。それに対して、制裁継続と完全非核化を進めようとする側は、米国と日本です。本質は、北朝鮮の核保有を容認するか否かであることを知るべきです。