夫婦愛を育む 35
自己肯定感が低いと愛を受け止められない

ナビゲーター:橘 幸世

 「自分に自信がない」「負債を常に感じている」「自分のことが嫌いだ」という人は、人間関係がなかなかうまくいきません。
 自分を低く評価しているので、「こんな自分を好きな人がいるはずがない」と心の奥底で思っています。誰かが好意を示しても、素直に受け止められません。受け止められなければ、安心して関係を育むのが難しくなります。

 幸せな人間関係、信頼関係は、各自の善性から発せられる言動のキャッチボールを通して築かれます。けれど、自分が嫌いな人は自分の負の側面にとらわれていて、自分の長所にあまり焦点を当てません(中には、長所なんか一つもないと思っている人もいます)。善のキャッチボールをするための土台が不安定なのです。

 最近は、自己肯定感を高めるための授業を行う小学校も出てきています。児童がお互いの長所を言い合い、自分に対しても他人に対しても長所に焦点を当てるよう学んでいくと、クラスの雰囲気も落ち着いてきて、問題行動などが減ったという結果も報告されています。

 大人がそれをするのは、なかなか照れくさいものがあるかと思いますが、自分の長所を自分で書き出す、あるいは家族に書いてもらうワークを勧めるカウンセラーもいます。自分のできること、頑張ってきたことを認めることも大切です。

 あるアメリカの精神科医が講演で、「自分自身の親友でいよう」といった趣旨のことを話していました。私たちは落ち込んでいる時、自分のダメだった点にくよくよし、何度もその失敗のシーンや傷ついたシーンを心の中でリプレイします。そしてさらに落ち込むのです。そんなふうに自分で自分をいじめるのではなく、ちゃんと心の傷の手当をしないといけないと彼は言います。

 「もしあなたの親友が、傷ついていたり落ち込んでいたら、あなたはどんな言葉を掛けてその友達を励ますでしょうか? 親友に言葉掛けするように、自分が失意の時、自分自身にも優しい慰めや励ましの言葉を掛けましょう」。

 本当にそうだと思いました。
 さあ、何と言ってあげたらいいか、何と言われたらうれしいか、考えてみましょう。

 「かわいそうだったね」「それはしんどいよね」「よしよし」「あんなこと言われてよく耐えたね。偉い、偉い」「つらい中でも、それが言えるなんてすごい」「あなたが悪いわけじゃない」「あなたはちゃんとやってるよ」「人生、うまくいかないこともあるよ」「しんどい時は無理に頑張らなくてもいいよ。エネルギーを蓄える時も必要だ」などなど・・・・・・。

 自分にも、家族や友人にも、上手に寄り添えるようになりたいですね。