シリーズ・「宗教」を読み解く 34
「宗教間対話」から「平和と開発の推進」へ

ナビゲーター:石丸 志信

 エルマール・クーン博士は、4月の欧州・中東ILC(国際指導者会議)のセッションで講演を行った。クーン博士は、ドイツ生まれの神学博士で、現在ヨーロッパ科学芸術アカデミー「世界の宗教」クラス学部長を務め、「宗教間対話」の専門家である。

 彼は、「宗教間対話」について、「宗教や信仰の共通性とか異質性とかを、学術的な議論のためだけにする時は終わった。宗教指導者らは、そうした議論に食傷(しょくしょう)気味である。終わりの見えない議論ばかりしている自分たちの限界も見えた」と述べた。

▲ウィーンのILCで講演するエルマール・クーン博士

 それは「一つの時代の終わり」であり、昨年11月13日、韓国・ソウルで創設された超宗教平和開発協会(IAPD)に、「新しい時代の精神的ビジョンを実現する大切なステップ」を見いだすとクーン博士は評価した。「平和と開発の推進」の目標に向けて、精神的指導者である宗教指導者、学術分野の指導者、政治指導者たちを一つにすることができれば、世界を変える大きなチャンスがある、とも語った。

 さらに、「国連の経済社会理事会(ECOSOC)の総合協議資格を持つ国連NGO(非政府組織)である天宙平和連合(UPF)は、これまで国連に欠けていた精神的要素や宗教的要素を補うことに大いに貢献できるだろう」と述べ、IAPDの進展に期待を示した。