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脱会説得の宗教的背景 33
超越神か内在神か

教理研究院院長
太田 朝久

 YouTubeチャンネル「我々の視点」で公開中のシリーズ、「脱会説得の宗教的背景/世界平和を構築する『統一原理』~比較宗教の観点から~」のテキスト版を毎週火曜日配信(予定)でお届けします。
 講師は、世界平和統一家庭連合教理研究院院長の太田朝久(ともひさ)氏です。動画版も併せてご活用ください。

「東洋」と「キリスト教」の神観の“相違点”―超越と内在
 さて、東洋とキリスト教の神観の“相違点”―「超越」と「内在」について説明します。

<キリスト教の説く神>
 キリスト教の説く神は「超越神」です。
 神は宇宙が存在する前に、厳然と存在しておられ、その神が被造世界(宇宙)を創造したとします。
 従って、宇宙と“分離”して存在しているのが、キリスト教で説く神です。
 もし宇宙が消滅したとしても、神は厳然と存在するのです。

 また、キリスト教の説く神は“人格神”です。神と人間は分離しているので、人間は神に対し話しかけることができます。
 キリスト教の「祈り」は、人間が神に話しかけるという「対話」(Dialog)です。話し合いができるのは、二人が分離しているからです。

 そして神と人間の関係は、「天にいますわれらの父よ」(マタイ69節)と祈るように、“親子関係”だといいます。
 ただし、神とイエス様は「三位一体」の“真の親子関係”ですが、イエス様以外の人間は、神によって“無”から“創られた存在”であり、どんなに頑張っても神と一体になることはできません。かつメシヤになることもできず、神と人間には、厳然とした“立場の違い”があります。

 本シリーズ「『超越神』(創造神)と『汎神論』(内在神)の和合統一」でお話ししたように、キリスト教は、森羅万象に神仏が宿るという「汎神論」や「アニミズム」を極端に嫌ってきました。

 最終的に、信仰を持たない人間は「最後の審判」で滅ぼされてしまうと考え、人間だけでなく、宇宙もまた、終末において大音響をたてて焼け崩れ、消滅するというのです(ペテロ31012)。そして、信じる者だけが新しい天と地に住むというのです(ペテロ313、黙示録2112)。

<東洋思想の神観>
 キリスト教の神観と異なって、東洋思想は「汎神論」です。いわば、宇宙の中に、心的機能として神仏が内在し、それを“宇宙の大生命”“神仏”など、どう呼ぶのかは別として、人間もその“宇宙の大生命”(内在神)の一部であり、森羅万象も全て神の一部だと捉えます。
 故に、宇宙が消滅すれば神仏も消滅することになります。

 宇宙=神仏なので、仏教の祈り(お題目)は、キリスト教の“対話”ではなく、“独白”(Monolog)になります。
 その目的は、いかに“宇宙の大生命”“神仏”と混然一体となるかというところにあります。かつ、自然界を重んじ、崇敬する信心を持っています。

 ただし、仏教にも“念仏”(南無阿弥陀仏)といって、キリスト教と類似する祈りの構造を持つ宗派もあります。
 例えば、浄土宗などがそうです。阿弥陀如来という祈る対象があるため、必ずしも「独白」とばかりは言えません(参考:市川智康著『仏さまの履歴書』水書坊、2226ページ)。

 しかし、「汎神論」の立場における祈りは、基本的には「独白」です。

(続く)

※動画版「脱会説得の宗教的背景 第8回『唯物論』と『唯心論』の和合統一〈その3〉」はこちらから