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コラム・週刊Blessed Life 304
貧困と教育の相関関係を見る

新海 一朗

 持続可能な社会を目指すための課題である「SDGsSustainable Development Goals/持続可能な開発目標)」でも取り上げられている「貧困をなくそう」という目標は、非常に大きなテーマです。

 しかしこの地球上から貧困をなくすということは、そう簡単なことではありません。
 今回は、貧困問題について考えてみましょう。

 貧困とは、教育、仕事、食料、保健医療、飲料水、住居、エネルギーなど、最も基本的なモノやサービスを手に入れられない状態のことです。

 貧困にも、その度合いによって「絶対的貧困」と「相対的貧困」があると、区別して語られることがあります。
 絶対的貧困とは、食料や衣類など人間らしい生活の必要最低条件の基準が満たされていない状態のことをいい、相対的貧困は国や社会、地域など一定の母数の大多数より貧しい状態のことをいいます。

 データの取り方によって数値はいろいろですが、国連機関などの発表によれば、現在、世界中で76700万人、つまり10人に1人が極度の貧困状態(1日当たり1.9ドル以下で生活している)にあると見られています。

 しかも、そのうちの約半数、38500万人が子供であり、世界中の子供たちの5人に1人がそういった状況に置かれているというのです。
 発展途上国に限らず、先進7カ国といった国でさえ、貧困にあえいでいる人々はたくさんいます。貧困は実に深刻な人類全体の課題であるといっていいでしょう。

 貧困であるということが何を意味することになるのかといえば、何と言っても、子供の教育に直結する問題にならざるを得ないということです。

 貧困国の共通した特徴は、子供の教育に投資できない国家予算の現実があり、学校教育においてさまざまな問題が生じています。

 学校に行けない子供(5歳~17歳)が、世界には3300万人もいるというユニセフの報告書(2018年)の内容を聞けば、これは大変なことです。

 基本的な読み書き、計算などが十分にできない状態が、その子供たちの未来を奪い取ってしまうことにつながっていくことは容易に想像できます。

 世界の国と地域のうち、発展途上国は146に上るとされ、世界の人口のおよそ80億人のうち約8割が発展途上国に住む人々です。

 こういう現状を理解すれば、わずか2割の富裕国家と8割の貧困国家で地球は成り立っているという状態ですから、貧困のテーマはますます重大極まりないものとなります。

 問題はこのような貧困状態をどのように解決することができるかということになりますが、そのポイントになるのが教育なのです。

 貧困故に教育が行き届かない、教育が脆弱(ぜいじゃく)だからいつまでも貧困から抜け出せないという悪循環があります。これを「貧困の世代間連鎖」とも呼びます。

 先進国家は押しなべて、教育体制を完備しています。
 初等教育から始まって、中等教育、高等教育、研究機関など、教育なくして「先進国」を語ることは不可能です。

 人類の最大の課題は、教育の不全、不備、欠如といった状況が、貧困と密接な関係にあることに気付いて、いかに教育を完備するかに取り組むことです。それ以外に有効な手立ては見つかりません。

 いくら先進国といえども、教育が駄目になれば、その国は国力を失い、衰退の道をたどります。
 たとえ今、貧困国であっても、教育に成功すれば、その国は発展し、豊かな国になっていくことは間違いありません。

 教育先進国になることこそが貧困脱出の道なのです。