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青少年事情と教育を考える 254
子供・若者にとって“家族”とは

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回は、「“母親”になることはしんどい」といったマイナスのイメージが広がる風潮があることを取り上げました。

 母親になった女性が悩みや苦しみを抱えていることは確かですし、夫あるいは社会の支えが足らなかったことを反省すべきでしょう。

 一方で、“母親”という生き方について、個人が尊重されていない、あるいは古いといった言葉で語られるようなことがあるとすれば、不幸な社会となってしまうのではないでしょうか。

 そうした意味でも、“母親”を大切にする社会を築いていかなければならないと思います。
 では、子供や若者から見て、親あるいは家族はどのような存在なのか。最近の調査を見てみます。

 一つは、内閣府が2023年3月に公表した「こども・若者の意識と生活に関する調査」です。対象は10〜39歳の男女2万人です。
 それによると、子供・若者(40歳未満)の9割以上が「自分の親(保護者)から愛されていると思う」(「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の合計)と答えています。

 また気持ちがほっとする居場所についての質問では、最も多かったのが「家庭」で87.0%でした(「自分の部屋」「家庭」「学校」「職場」「地域」「インターネット空間」の六つから選択)。

 さらに20年後の自分自身のイメージについては、「親を大切にしている」が83.7%です。ただ、「結婚している」66.9%、「子供を育てている」55.3%と、結婚や子育てのイメージを持っている若者は6割前後でした。

 もう一つ、国立青少年教育振興機構が2022年6月に公表した「コロナ禍を経験した高校生の生活と意識に関する調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較」です(対象は日本4241人、米国1900人、中国3435人、韓国1838人の高校生)。

 それによると、日本の高校生は家族・親との関係が比較的良好という結果が出ています。「家族との関係が良好である」(58.3%)、「親(保護者)は私のことを理解している」(51.7%)、「家にいると落ち着く」(64.6%)で、4カ国の中で日本がトップでした。

 また、2014年と2021年の調査結果を比較すると「家族との関係が良好である」は18.1ポイント、「親(保護者)は私のことを理解している」は20.7ポイント高くなっています。

 コロナ禍という特殊な状況がありましたが、子供たち・若者たちの親あるいは家族への肯定的な思いは強くなっていると言えそうです。