青少年事情と教育を考える 28
「親になる」準備はいつから始まる?

ナビゲーター:中田 孝誠

 今の社会の最大の問題の一つは、児童虐待です。そして、児童虐待のリスクを高める要因の一つが、望まない妊娠や早期の妊娠(10代妊娠)・出産であることは、本欄でも以前紹介しました。こうした状況に対して、「親が親になっていない」「子供が子供を産んだ」と言われることもあります。

 子供を産んだら誰でも親になりますが、だからといって誰でも親の役目を果たせるというわけではありません。特に少子化で兄弟が少ないこともあり、赤ちゃんに一度も接したことがないという中高生が増えています。そこで、学校に赤ちゃんと母親を招いて体験授業を行うという学校も出てきています。

 一方、「親になるための準備教育」を訴える専門家もいます。
 斎藤嘉孝・法政大学教授によると、アメリカでは「ペアレンティング・プログラム」という、親自身が“発達”するための学習があります。
 例えば、親が子供への声掛けの仕方などを学ぶことによって、親子関係が改善したといった効果もあるようです。

 斎藤教授は、「親発達」というキーワードを提案しています。よく、子育てを通して親も成長するといわれますが、「親発達」はそれだけではなく、子供が生まれて親になる前、「親になるための発達は(親自身の)子供時代から始まっている」と述べています。

 具体的には人生の六つのステージ、①原体験期(幼少・青年期) ②直前期(妊娠期) ③育児期 ④学童親期 ⑤青年親期 ⑥巣立ち期に分けて、特に幼少期からの原体験が重要だと指摘しています。子供の発達段階理論ではエリクソンが有名ですが、同じような発達段階があるというわけです。そして「親になるための教育」を学校教育に取り入れることを提案しています(以上、法政大学のウェブサイト、斎藤教授の著書『親になれない親たち』より)。

 いわば、人間は生まれた時から、将来親になるための準備をしているとも言えるかもしれません。親になってからではなく、親になる前が大切ということですね。

 最近は、将来の結婚や子育てのことも含めて考えさせるライフデザイン教育を行っている所もあります。
 その中でもぜひ、子供たちが親になることの意味や乳幼児との接し方を具体的に体験する機会を増やしてほしいと思います。