世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

深刻な中国経済、相次ぐ不動産会社危機

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、109日から15日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 ハマスとイスラエルの戦闘、双方の死者1600人超(9日)。ハマスへの攻撃、米軍派遣は計画せず(10日)。北朝鮮が党創建記念日、「世界的強国に飛躍した」(10日)。米最新鋭空母など東地中海に到着(10日)。トランプ氏、イスラエル首相を準備不足と批判(11日)。韓国検察、野党代表を在宅起訴(12日)。中国河北省滄州、地方銀行で取り付け騒ぎ(~14日)。サウジ、イスラエルとの国交正常化交渉を凍結ガザ衝突で困難と判断か(13日)、などです。

 不動産開発会社大手の「恒大集団」(恒大)の経営危機が、一部の金融機関に飛び火しました。
 河北省滄州市の地方銀行「滄州銀行」で10月7日以降に取り付け騒ぎが起きたのです(時事ドットコムニュースより)。政府は金融システムへの影響を抑えようと対応に乗り出しています。

 滄州市は人口約730万人。滄州銀行支店は同日、警備員10人近くを配置し、来客に対して一人ずつ、来店目的を訪ねるという光景が展開したのです。
 銀行窓口の内側には、資金繰りに不安がないことを強調するため100元(約2000円)の札束が1メートルの高さに積まれるありさまでした。

 そして店頭には、地元政府が出した張り紙があり、「滄州銀行の総資産は2465億元に達し、預金は法律で保護されている」とする告知文が掲示されました。それでも預金者の間には「銀行も政府も信用できない」との不安が広がっているのです。

 中国北部の遼寧省瀋陽市を地盤とする盛京銀行でも同様の取り付け騒ぎが起きています。かつて恒大が同行の大株主だったことが不安視された原因です。

 共産党政権は恒大の創業者である許家印会長を拘束する厳しい姿勢で臨んでいますが、この危機を超える手立てにはなりません。恒大に次ぐ不動産大手の碧桂園でも、デフォルト(債務不履行)の危機が続いています。

 これまで指摘してきたように、中国経済が揺れています。不動産不況、地方の財政難、人民元安の三つが「発火点」です。
 これまでの成長モデルだった、不動産価格の上昇を前提とした成長モデルがきしんでいます。住宅販売が不振となり価格が下がり、金融不安につながっているのです。

 地方財政の悪化と約15年半ぶりの水準に迫る人民元安が足かせになり、中国政府は思い切った財政・金融政策を打ち出せないジレンマに陥っています。
 中国の不動産不況は深刻さを増す一方です。7月は主要70都市中49都市で新築住宅価格が前月より下落しました。

 「われわれは住宅ローンを払わない」。7月末、上海中心部の金融街「陸家嘴」に程近いマンションの購入者が声明を出しました。
 その理由は、売り主の建設代金未払いで工事が進まず、予定の期限を過ぎても一向に引き渡しされないためです。

 こうした動きはこれまで地方都市の中低価格物件や別荘などが中心でしたが、11500万元(約3億円)を軽く超えるような高級マンションにまでこのような状況が波及したことに市民の間で驚きと不安が広がっているのです。

 日本のバブル崩壊とその後の危機と比較され、「日本化」といわれることもありますが、欧米や周辺諸国との関係において当時の日本とは異なりさらなる困難さがあるといえます。

 台湾海峡をはじめ、世界に与える大きさを考える時、一時も目を離すことができません。



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