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脱会説得の宗教的背景 9
聖書は果たして「神の啓示」なのか

教理研究院院長
太田 朝久

 YouTubeチャンネル「我々の視点」で公開中のシリーズ、「脱会説得の宗教的背景/世界平和を構築する『統一原理』~比較宗教の観点から~」のテキスト版を毎週火曜日配信(予定)でお届けします。
 講師は、世界平和統一家庭連合教理研究院院長の太田朝久(ともひさ)氏です。動画版も併せてご活用ください。

聖書が何度も編さんし直された理由
 もし、「復帰摂理」、すなわち「救いの摂理」がアダム家庭で勝利すれば、その時にメシヤが来ていました。
 しかし失敗して、ノアまで延長したのです。ノアの時に勝利すれば、その時メシヤが来ていました。
 しかしそれも失敗し、アブラハムに延長しました。

 アブラハムの象徴献祭の失敗で、さらにサウル王の統一王国時代へ延長。そのサウル王の不信仰を経て、王国が南北王朝に分裂し、さらに延長。結局、イエス様の時代にまで至ったのです。
 そして、イエス様の十字架のため、さらに再臨時代に延長しました。この延長の故に、聖書は何度も編さんし直される必要があったというのです。

 そのような聖書理解に立って考えると、たとえ聖書批評学者たちが言うように、聖書の成立過程に“人的要素”が加わり、徐々に発達して現在のかたちになったとしても、むしろそれは神の復帰摂理に“必要なことだった”と言えるのです。

 例えば、イスラエルの南北王朝分立に端を発し、BC52世紀頃に成立した「サマリヤ五書」。そして、BC31世紀に成立し、イエス様当時に読まれていた「七十人訳聖書」(セプチュアギンタ)。さらにイエス様の死後、AD90年ごろに定められたヘブル語聖書(マソラ・テキスト)など、成立年代の違う代表的な聖書があります。
 その聖書の年数記述を比較すると、相互間で食い違いが存在します。それは、聖書が何度も編さんし直される過程を経てきたからなのです。

 イエス様当時、初代教会で読まれていた「七十人訳聖書」は、アダムからイエス様までで約6000年になっています。
 しかし、今日使用されているヘブル語聖書(AD90年ごろ)の年数は、アダムからイエス様まで約4000年であり、現代まで約6000年です。

 七十人訳聖書とヘブル語聖書の年数の違いに対し、シトー派修道会院長ポール・ペズロン(16391706)は、アダムからイエス様までを6000年にすると、天地創造6日間、1日は千年のごとし(ペテロ38)で、イエス様をメシヤにすることになるため、ユダヤ人が4000年に改ざんしたとの「仮説」を主張しました。

 ところが1947年に発見された「死海写本」で、イエス様当時、すでに6000年と4000年の2種類の年数記述があったことが確認されています。
 こうなると、聖書は果たして「神の啓示」と言えるのか疑問が生じ、それに対しキリスト教は答えることができません。

 「統一原理」には答えがあります。
 イエス様の時、ユダヤ教が信仰を立てていれば、その時勝利し、初代教会で読まれていた七十人訳聖書の6000年が採用されていたでしょう。
 しかし十字架によってその後、キリスト教史がイスラエル史と同じありさまで繰り返され延長したため、AD90年ごろのヤムニヤ会議で4000年が採用されたということです。そして、今や再臨主の摂理が“最後の摂理”なのです。

 結論として、次のように述べることができます。
 神は、復帰摂理に人間の責任分担が関わる中、その時代その時代で救いを成就しようと摂理しておられました。

 アダム家庭の時に勝利すれば、その時メシヤが遣わされていました。
 それはノアの時も同様で、アブラハムの時も同様です。さらに統一王国時代の時も同様であり、イエス様の時も同様だったのです。

 それらを考察してみると、旧約聖書がいろいろな編さん過程を経ながら、年数表示も何度も編さんし直されて成立していく過程が、むしろ神の摂理に必要であったということです。

 従って、聖書批評学者が言うように、人的要素が加わりつつ、徐々に編さんされ、実際の歴史と違ったかたちの旧約聖書(特に創世記)の記述であるにもかかわらず、なおそこに歴史の同時性の「象徴路程」(原型)が表示されていた一点で、旧約聖書は“神の啓示”であると主張できるのです。

 「統一原理」は“復帰”という尺度で聖書全体を解釈し、それを人類の実際の歴史に適応させることで、批評学的な学問を受け入れつつも、そこに“神の霊感”があるとして、従来とは違った新しい意味の“聖書の霊感説”を主張することに成功しているのです。
 ここに、「統一原理」の素晴らしさ、価値があるのです。

※動画版「脱会説得の宗教的背景 第3回『リベラル』と『福音派』との和合(旧約聖書学)」はこちらから