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ダーウィニズムを超えて 27

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第二章 進化論を超えて─新たな展望

(三)人間の創造

(2)痕跡器官、偽遺伝子、相似性は進化の証拠か

1. 痕跡器官、隔世遺伝
 進化論では、祖先の時代には働いていたものが、進化の過程で働きを失い、退化したと考えられる器官を痕跡器官と言う。そして退化も進化の一つのプロセスと見ている。たとえば進化論者は、人間の背骨の下に、「尾てい骨」があるのは、昔、猿のように尻尾があった名残だと言う。また人間の耳に「動耳かく筋」があるのは、昔、うさぎのように、耳を動かしていた名残だと言う。虫垂についても、その本来の機能が分からないとしても、痕跡であることには変わりないと言う。さらに「隔世遺伝」についても進化の証拠であると言う。ジェリー・A・コインは次のように述べている。

 ときおり、ある個体に祖先の形質の再現のような変則的な特徴が不意に現れることがある。……ヒトの赤ん坊に尾がついていたりするのだ。このような散発的に表出する祖先の特徴の名残を「隔世遺伝」、または「先祖がえり」(atavism)という。……このような隔世遺伝はなぜ起こるのだろう。いまのところ最も考えられそうなのは、祖先においては機能していた遺伝子が、ある時点で必要とされなくなって自然淘汰により沈黙させられていたのだが、のちにふたたび発現したことによって起こるという仮説である(*50)。

 ダーウィンも、「人間には数々の気高い資質がある。……それでも人間はその身体の構造に、消すことのできない刻印を抱えている。自らの下等な起源を示す刻印を(*51)」と述べていたのであった。

2. ゲノムへの痕跡
 ユージン・E・ハリスは、「ヒトがすべての大型類人猿とゲノムでつながっているという圧倒的な証拠が見て取れる。この進化の連続性は、現世大型類人猿のゲノムにランダムに振り分けられるというプロセスによって生じた。ヒトゲノムの中には、内なるチンパンジーだけでなく、内なるボノボ、ゴリラ、オランウータンも見て取れるのだ!(*52)」と言う。

 イタイ・ヤナイ、マルティン・レルヒャーは、「現代ヨーロッパ人では、ネアンデルタール人のアレルを持つ可能性はおよそ50パーセントだ。……現代ヨーロッパ人は半分がネアンデルタール人というわけではないが、その免疫系の重要な部分は、ありがたいことにネアンデルタール人由来の特質を備えている(*53)」と言う。

3. 死んだ遺伝子(偽遺伝子)
 遺伝子が有効に機能していない場合、その遺伝子は「偽遺伝子(ぎいでんし)」と呼ばれる。たとえばヒトの場合は、約3万個の遺伝子のうち、2000個以上が偽遺伝子であり、まさに死んだ遺伝子であると言う。ジェリー・A・コインは「われわれがこれだけ多くの不活性化した遺伝子を持っているということ自体、進化のさらなる証拠である(*54)」というのである。

4. 発生反復説
 脊椎動物の胚(はい)を比較すると、発生初期はどれもよく似ていて、鰓裂(さいれつ/えらあな)や尾をもつほか、心臓などもすべて一心房一心室の時期を経過する。進化論者はこれを、動物は個体発生の過程において、進化の道筋をたどりながら、過去から現在までの過程を再現しているのだと主張している。

5. 統一思想の見解
 統一思想によれば、創造は①ロゴスの形成、②被造世界の創造という、二段構造でなされたのである。

①ロゴスの形成
 神は初めにロゴスを形成された。すなわち、天地創造のシナリオを描かれたのである。その際、神は人間アダム・エバの姿を思い浮かべながら、アダム・エバの姿をモデル(標本)にして、それを捨象(単純化)しながら動物、植物を構想された。その際、高級なものから低級なものへという順序で構想された。次に天体、原子、素粒子、光という順序でシナリオが描かれたのである。つまり人間をモデルにして、下向きに構想がなされたのである。

②被造世界の創造
 天地創造のシナリオ(ロゴス)の形成に続いて、シナリオに従って、実際の創造がなされた。「光あれ」という言(ことば)に続いて、「光があった」、すなわちビッグバンが起きたのである。やがて光(電磁波)から素粒子、原子、分子、天体が生じた。その中から水の惑星である地球が誕生し、地球上に藻類、アメーバから始めて、次第に高次の植物、動物が現れ、最後に、人間が登場したのであった。すなわち、創造は人間を目指してなされたのである。(図14参照)

 さらにロゴスの形成を詳細に見ると、そこには捨象のほかに、変形のプロセスがあったのである。すなわち、神は人間(アダム・エバ)の表象を標本として、それを捨象のみならず、変形しながら、高級なものから低級なものへと動物、植物の表象を描いていったのである。(図15参照)

 図15において、右向きの矢印は捨象(単純化)を示しており、四方向に向けた矢印は変形を示している。実際は四方向だけでなく、数多くの変形があったのであるが、ここでは四方向だけを示しているのである。

 このような統一思想の創造論の観点から見れば、人間は万物の総合実体相であり、したがって人間は生物の要素を総合したかたちで持っているのである。他方、万物は人間の持っている要素を捨象(単純化)、変形して持っているのである。そのために、動物の遺伝子は人間の遺伝子を削ったり、変形したかたちになっているのであり、人間の遺伝子は動物の遺伝子を寄せ集めて合成したかたちになっているのである。

 尾に関して言えば、四足で地面に平行に走る動物や空を飛ぶ鳥が、安定して走ったり飛んだりするためには尾が必要なので、それらの動物を構想するに際して、人間の背骨を伸ばして尾がつけられたのであるが、直立歩行する人間には尾は必要ないので、人間の背骨の下は動物の尾を圧縮したかたちになっているのである。またウサギには周囲を警戒するために長くて動く耳がつけられたが、人間にはそのような耳は必要ないので、動耳かく筋は消去または圧縮したかたちになっているのである。虫垂に関しても同様である。すなわち、動物において変形したものを、人間において元に戻したということであって、これは痕跡器官と言うべきものではないのである。

 偽遺伝子に関しては、長い尾、長くて動く耳、長い首、長い鼻など、動物には、そのような変形に必要な遺伝子が注入されたのであるが、人間においては必要のない器官であったために、それら動物の変形に注入された遺伝子の機能が消去されたものと理解される。

 ヒトのゲノムに原人や類人猿と共通性が見られるのも、原人や類人猿がヒトをモデルにして、ヒトのゲノムを捨象・変形した姿で造られているから当然のことである。

 隔世遺伝に関しては、圧縮あるいは消去された遺伝子が偶発的に蘇(よみがえ)ったものと理解される。

 発生反復説に関しては、ヒトの胎児の成長が、哺乳類、鳥類、爬(は)虫類、両生類、魚類の胚の発生のモデルになっているのであり、進化ではなくて、人間をモデルにした創造であることを示しているのである。


*50 ジェリー・A・コイン、塩原通緖訳『進化のなぜを解明する』日経BP社、2010年、12425頁。
*51 同上、379240頁。
*52 ユージン・E・ハリス、水谷 淳訳『ゲノム革命』早川書房、2016年、72頁。
*53 イタイ・ヤナイ、マルティン・レルヒャー、野中香方子訳『遺伝子の社会』NTT出版株式会社、2016年、169頁。
*54 ジェリー・A・コイン『進化のなぜを解明する』136

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 次回は、「万物の霊長である人間」をお届けします。


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