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脱会説得の宗教的背景 7
歴史的変遷を経た聖書の編さん

教理研究院院長
太田 朝久

 YouTubeチャンネル「我々の視点」で公開中のシリーズ、「脱会説得の宗教的背景/世界平和を構築する『統一原理』~比較宗教の観点から~」のテキスト版を毎週火曜日配信(予定)でお届けします。
 講師は、世界平和統一家庭連合教理研究院院長の太田朝久(ともひさ)氏です。動画版も併せてご活用ください。

「聖書年代学」について
 18世紀までは、聖書の年数をそのまま信じ、人類歴史を考察する、いわゆる「聖書年代学」が盛んでした。
 イギリス国教会のジェームス・アッシャー大主教(15811656)が、聖書の年数計算に基づき「天地創造はBC4004年」とし、人類歴史を約6000年と結論付けたのは有名です。

 ところが、その後、聖書を合理的に検証する中、実際の歴史と聖書の年数は異なっているとの疑問が提起されました。
 現代では、ファンダメンタリスト(原理主義者、根本主義者)以外は、聖書(特に創世記)の年数を文字どおりに信じておらず、実際の人類歴史と異なっていると考える人が多数派です。
 聖書は、本当に「神の啓示」の書といえるのかが疑問視されてくるのです。

 古くは、モーセ五書(創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記)は、モーセが書いたという「モーセ著作説」が信じられていました。しかしその後、「発達説」といって、幾つかの資料(J資料、E資料、P資料、D資料)に基づき、何度も編さんし直されながら今日に至ったと考えられています。

 反対牧師は“十字架中心主義”から脱会説得するだけでなく、実際の歴史は聖書の歴史とは食い違っている、エデンの園の話は「神話」だなどと言って脱会説得をします。

 また、私が高校の時に抱いた、聖書の「底本」の違いの問題があります。
 イエス様当時、初代教会で読まれていた『七十人訳聖書』(セプチュアギンタ=ギリシャ語訳の旧約聖書)と、イエス様の死後AD90年頃、ユダヤ教のラビがヤムニア会議で定めた『ヘブル語聖書』(マソラ・テキスト)とで違いがあるのです。

 この違いは、今日のカトリック聖書(ウルガタ)とプロテスタント聖書の違いにもつながっています。
 カトリックでは、旧約聖書に「第二正典」(マカバイ記、トビト記、シラ書、ユディト記、知恵の書など)を含んでおり、プロテスタントではそれを入れていません。旧約聖書の正典に違いがあるのです。

 それ以外にも、イスラエルの王朝分裂後、北イスラエルの流れをくむサマリヤ人の「サマリヤ五書」があります。それと「モーセ五書」とに違いがあります。

 その違いの背景には、聖書が人間の手によって何度も編さんし直されながら、今日まで伝えられてきた事情があるためです。
 また、シリアのエブラで、古代の図書館跡が発見されて大量の粘土板が発掘され、粘土板に「天地創造」や「アダムとエバ」の記述があり、話題となりました。

 このように、聖書はさまざまな歴史的変遷を経ながら編さんされてきているのです。

※動画版「脱会説得の宗教的背景 第3回『リベラル』と『福音派』との和合(旧約聖書学)」はこちらから