コラム・週刊Blessed Life 281
困難な世界を生き抜く力

新海 一朗

 今から半世紀も前の1966年、米国の福音派宣教師ビリー・グラハム(19182018)は、『世界は燃えている(World Aflame)』を著しました。
 南ベトナムを支援する民主主義国家の米国。北ベトナムを背後から支える中国・ソ連の国際共産主義の二大国家。ベトナム戦争は大国の代理戦争の様相を呈して過熱しました。まさに世界が燃えている状態であることを心の底から憂えてビリー・グラハムは警告を与えたのです。

 現在、ウクライナ戦争(2022224日~)によって世界は燃えています。
 「欧米VS.ロシア」の構図で代理戦争の衝突地となったウクライナでの戦闘は、停戦会談を迎える気配もなく、日夜繰り広げられています。
 そんな中、新たに北朝鮮までもがロシアと会談し、ウクライナ戦争の中に引きずられていく情勢を見せています。

 9月13日、国連のグテーレス事務総長は、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が会談し、軍事技術協力の拡大などを協議したと見られることについて、「いかなる形でも、北朝鮮と協力する国は安保理の制裁決議を尊重しなければならない」と述べ、北朝鮮からの武器調達を禁止した安保理決議を全ての国が順守しなければならないと強調し、ロシアと北朝鮮双方に警告を与えました。

 このような中でも、世界の人々は戦争を終結させるための努力を継続し、戦争の悲劇と犠牲を終わらせることに尽力しなければなりません。
 戦争を終わらせ、真に人々が戦争という「死」の力を無力にするためには、「生」の力が必要です。「生の力」、すなわち、生きるための力とは何か、この問いを掘り下げていくと、五つの力があることが分かります。

 生きるための力とは、第一に、「愛の力」です。
 人間一人一人が、真の愛を自然万物に注ぎ、そして何よりも人間に注ぐことです。

 第二に、「感謝の力」です。
 幸運であれ不運であれ、全てを感謝することが、生きる力につながります。

 第三に、「信仰の力」です。
 信仰を持つ人は、絶望に陥ることなく、夢を抱くことができ、やがてその夢を実現します。

 第四に、「希望の力」です。
 希望を持つ人は常に前進する力を失いません。

 第五に、「行いの力」です。
 人に対して、善を実践することが生きる力となります。

 このように、「愛」「感謝」「信仰」「希望」「善行」の力を生きる力として、これら五つの「生の力」が「死(戦争)」を無力にするのです。
 言い換えれば、世界は今、「生の力」を失っているから、「死の力(戦争の力)」に打ち負かされているのだといえます。ウクライナ戦争がその例です。

 ウクライナ戦争の悲劇は、単にこの地域で起きている悲劇というより、世界のどこでも同じことは起こり得ると考えるべきです。
 「生の力が死(戦争)を無力にする」と確信することが必要です。

 1カ月前の818日、ニューヨークタイムズが報じた内容によると、ロシア軍の死傷者は30万人に近づいていると見られ、このうち、死者が最大12万人、負傷者が17万人から18万人ということであり、一方、ウクライナ軍の死者は約7万人、負傷者は10万人から12万人と推計されています。

 結局、ウクライナ戦争での両軍の死傷者は50万人に迫ると推計されています。
 こういう不条理な戦争は、即刻、止めなければなりません。いかなる利益にもなりません。死の力が生を飲み込むことなく、生の力が死を無力にすることが、人類社会の急務なのです。