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中和新聞セレクト Vol.4
混迷する現代社会Ⅱ

 毎週2回(火、金)、さまざまなコンテンツを配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
 第4弾は「混迷する現代社会Ⅱ」(21世紀の家族を考える会)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。

 同コンテンツは『中和新聞』2020年5月から連載中のシリーズです。

20回「性自認」と「トランスジェンダリズム」について考える(前編)

(中和新聞 2023年3月17日 通巻1546号より)

 このシリーズでは、現代社会が抱えるさまざまな問題点を分析し、社会や家庭における正しい観点(価値観)や方向性を提示します。今回と次回の2回にわたって、「性自認」と「トランスジェンダリズム」について考えます。

 「現在、自民党でも法案の提出に向けた準備を進めていることを確認している」

 20233月1日の参議院予算委員会で、「LGBT」など性的少数者への理解増進を図る法案(以下、「LGBT」法案)について質(ただ)された岸田文雄首相は、こう説明しました。

 2月初めに首相秘書官の一人が、性的少数者に対する差別的な発言を行ったことを受け(翌日には更迭)、「LGBT」法案を成立させようという機運が国会の内外で高まっています。

 20216月の通常国会では見送られた同法案ですが、改めて、同法案の大きな問題点として挙げられる「性自認」と、「トランスジェンダリズム」というイデオロギーについて確認しましょう。

■「性自認」とは?
 「LGBT」法案の正式名称は、「性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」です。

 その「目的」(第一条)に掲げられた「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものである」という文言が、自民党内の保守派からも大変問題視されました。

 また第二条の「定義」では、「性自認」を「自己の属する性別についての認識に関する性同一性の有無又は程度に係る意識をいう」と定めています。少々分かりにくい表現ですが、20226月に可決(7月から施行)された埼玉県の「埼玉県性の多様性を尊重した社会づくり条例」では、性自認をより分かりやすく、「自己の性別についての認識をいう」と定義しています。

 現在、検討中の「LGBT」法案における「性自認」も、要は「自己の性別についての認識」のことだと言えるでしょう。このような「性自認」を「理由とする差別は許されない」(さらに「差別」の定義が不明確)というのです。これでは、主張された「性自認」に異論を述べることができず、言った者勝ちになりかねません。

 トランスジェンダーで女装家の三橋順子氏(社会・文化史研究家)は、自身のツイッターで「トランスジェンダーは私だけじゃなく、基本『自称』なんだよ。誰かに『お墨付き』(診断書)もらうものではないしね」(2020年9月6日)と述べています。この発言からも分かるように、性自認とは事実上、「性自称」と言えるものなのです。

■「トランスジェンダー」とは?
 次に、性自認とは切っても切れない関係にある「トランスジェンダー」について、その意味を改めて確認します。日本大百科全書(ニッポニカ)によると、「生まれつきの身体的性別と、自分が認識する性別(性自認、ジェンダー・アイデンティティ)が異なる人々の総称。『超える』を意味するトランスtransと、『性別』を表すジェンダーgenderをあわせた造語である」とされます。「性別違和をもつ人々の総称」(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)とも言いますが、医学的概念である「性同一性障害」とは必ずしも一致せず、性別適合手術など外科的手術は望まない人もいます。

 昨今ではよく「トランスジェンダー女性」(略称「トランス女性」。生まれつきの性別は男性で、性自認が女性)の存在について耳にすることがあるかと思います。そして、「LGBT」法案の法制化に当たって、とりわけ懸念されるのがトランス女性の存在なのです。

 一方、トランス女性を全面的に擁護する、オピニオンリーダーの清水晶子氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)は、自身の著書『フェミニズムってなんですか?』で次のように述べています。「まずそもそも、トランス女性を集団として最初から性暴力の加害者(あるいは加害候補者)とみなすこと、トランス女性への正しい認識がないままに偏見に基づいて議論が進むこと、それ自体に大きな問題があります」。

 もちろん、トランス女性を不当に差別してはいけませんし、日本国憲法で保障されているように「個人として尊重される」べきなのは言うまでもありません。ただ、トランス女性である神名龍子氏も再三訴えているように、「『トランス系』あるいは性的少数者のためだけに都合のよい社会を構築するような(言論)内容であってはならない」のです(同氏著『トランスジェンダーの原理』)。

 清水氏が言う「トランス女性への正しい認識」とは何か、前述の清水氏の著書からは分かりません。ただ、「正しい」かどうかはさておき、トランス女性への認識、理解を深めることは、性自認や「LGBT」法案を考えるうえでも不可欠と言えます。

 与党で「LGBT」法案に「賛成」の立場の、ある国会議員は、20233月初めに自身のブログで、同法案と銭湯(女湯)などをめぐる支持者からの懸念に対して、次のように回答しています。

 「(法案成立後の女湯で)『女性が被害にあう』ということは起きず、ただの杞憂です」「トランスジェンダーの方で、銭湯において無理矢理にでも性自認通りの性別に入浴をしたいとまで考えている方は、私の知る限りでは、おられません」「(トランス女性をめぐる)『米国や英国での混乱』については特に私は承知をしておりませんが、…そもそも犯罪をLGBTの話として語ることが適切ではありません」

 このような「LGBT」法案・性自認「賛成」議員の主張について一言。あまりに認識が甘い! 仮にも法案を推進する国会議員であれば、諸外国の混乱について調べないのは無責任です。

 次回(後編)で、さらに掘り下げて論じます。

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 次回は、「『性自認』について(後編)」をお届けします。

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