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ダーウィニズムを超えて 15

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第一章 進化論を超えて
新創造論の提唱

(九)進化、創造のプロセス

◯進化論
 進化の総合説(ネオダーウィニズム)によれば、進化のプロセスは次のようである。

①突然変異が進化の素材を与える。
②自然選択が進化の方向を決める。

 突然変異とは、宇宙線、紫外線、雷などによる、偶然的で、ランダムな変異であり、その中で、まれに起こる有益な変異をもった生物が選択されて生き残る、というようにして進化は進んでいくという。

◯創造論
 ヨハネによる福音書に「初めに言があった。言は神と共にあった。……すべてのものは、これによってできた」とあるように、初めに神の心の中で言が形成された。そして、その言によってすべての被造物が造られたのである。

◯新創造論
 キリスト教と同様に、初めにロゴス(言)が形成され、次いでロゴスによって被造世界が造られたと見る。ロゴスとは、口から発する言葉のようなものでなくて、被造世界に対する神の構想であり、設計図である。ロゴスの形成は、人間から始まって高次な生物から次第に低次な生物というように下向的になされた。ところが被造世界の創造は、その逆に、低次な生物から次第に高次な生物へ、そして最後に人間というように、上向的になされたのである。これを「創造の二段構造」という。

 聖書に「家はすべて、だれかによって造られるものであるが、すべてのものを造られたかたは、神である」(へブル人への手紙34)とある。実際、どんなに質素な丸太小屋であっても、台風やハリケーンで、木が吹き飛ばされて、うまく組み合わさってできたと考える人はいないであろう。進化論者の言う突然変異とは、星の爆発から来る宇宙線、太陽の核融合反応(巨大な水素爆弾)から来る紫外線、そして雷など、まさに台風やハリケーンと同様なランダムな力の作用によるものである。そのような突然変異によって、構造や性質において、次第に高次元なものに進化していくということはありえない。次に統一思想の主張する「創造の二段構造」について説明する。

 創造に先立って、神の心の中で、神の直接的な愛の対象として人間の姿(表象〈ひょうしょう〉)が描かれていた。「神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された」(創世記127)とあるように、人間(アダムとエバ)は神の似姿として、最も完全なものとして考えられたのである。その人間の表象を標本として、それを捨象(しゃしょう)して動物の表象を描き、それをさらに捨象して植物の表象を描かれた。動物の中でも、まず人間に近い高級な動物の表象を描き、その表象を捨象しながら次第に低級で単純な動物の表象を描かれた。植物の表象も、高級な植物の表象から次第に低級な植物の表象が描かれた。そして動物と植物の表象を捨象していった極限において細胞の表象が描かれた。細胞は生物を構成する最小単位として考えられたのであった。

 次に動物、植物の表象を捨象して天体の表象が描かれた。なかでも人間の住み家として考えられたのが、水の惑星、地球であった。次に天体をつくる材料としての鉱物の表象が描かれた。さらに捨象を行って、分子、原子、素粒子の表象が描かれた。それらは鉱物、天体、植物、動物、人間をつくるための基本的な素材として考えられたものであった。そして最後に、究極的な素材として光(電磁波のエネルギー)が考えられたのである。

 このように、神の心の中では、人間→動物(高等な動物→低級な動物)→植物(高等な植物→低級な植物)→天体→鉱物→分子→原子→素粒子→エネルギーという順序で表象が形成されたのである。それは神がロゴスを形成されたこと、すなわち被造世界の設計図をつくられたことにほかならない。

 ところが、現象世界の創造は、ロゴスの形成とは逆の方向から行われた。つまり、ビッグバンと呼ばれている大爆発から素粒子、原子、分子が現れ、それらの原子、分子が結合することによって、鉱物からなる天体が形成された。そして、天体の中で一つの特別な惑星である地球が形成され、地球上に、植物が現れ、動物が現れ、最後に人間が現れたのである。

 ここで留意すべきことは、すべての植物が造られた後に動物が造られたのではないということである。植物界が動物界よりわずかに先行したが、両者はほぼ同時的に、それぞれ低級なものから高級なものに向かって創造されたのである。なぜなら植物と動物は互いに相手を必要とする共存、共栄の関係にあるからである。

 このように、創造はまず神の心の中でロゴスの形成が行われ、次いでロゴスに従って現象世界の創造が行われたのである。これを「創造の二段構造」という(図14参照)。生物界における創造の二段構造(図14の枠でかこった部分)において、現象世界に現れた第二段階だけを見ると、生物は単純で低級なものから複雑で高級なものへと進化したように見える。すなわち植物界においては、藻類→コケ植物→シダ植物→裸子植物→被子植物へと進化したように見え、動物界においてはアメーバ→無脊椎動物→魚類→両生類→爬虫類→哺乳類→類人猿へと進化したように見える。しかしそれは進化ではなく、ロゴスに従って計画的になされた創造なのである。

▲図14 創造の二段構造

 ところでロゴスの形成において、捨象のプロセスだけでなく、もう一つの変形というプロセスがあった。人間の表象を捨象して動物の表象を描いたというときの動物の表象は抽象的なものであった。次に抽象的な動物の表象を変形して、さまざまの個別的な動物の表象を描かれたのである。例えば鼻の長いもの(ゾウ)、首の長いもの(キリン)、耳の長いもの(ウサギ)、尾の長いもの(サル)などが考えられたのである。植物の場合も、同様に、抽象的な植物の表象を変形して、花を強調したもの(バラ・桜)、果実を強調したもの(リンゴ)、根を強調したもの(大根)などが考えられたのである。

 天体においても、抽象的な天体の表象を変形して、水の惑星(地球)、地球を小天体の衝突から守る惑星(木星)、輪のある惑星(土星)、光と熱を発する星(太陽)などが考えられたのである。さらに抽象的な原子の表象を変形しながら水素原子、酸素原子、炭素原子、窒素原子などが考えられたのであり、抽象的な素粒子の表象を変形しながら電子、陽子、中性子、ニュートリノなどが考えられたのである。以上のようなロゴスの形成における捨象と変形のプロセスを図15に示す。

▲図15 ロゴスの形成における捨象と変形

 古代ギリシャの哲学者アナクシマンドロスは、人間は魚類が変形して生じたと説き、プラトンは逆に、魚類や鳥類は人間退化の産物だと説いた。プラトンは人間を中心としたイデアの世界を見ていたのであり、アナクシマンドロスは現象世界を進化的に見たのである。すなわちプラトンは統一思想のいう創造の二段構造の第一段階であるロゴスの形成を見ていたのであり、アナクシマンドロスは第二段階である被造世界の創造を見ていたといえよう。

 18世紀末から19世紀初めのフランスの博物学者、ジョフロア・サン・ティレール(Geoffroy Saint-Hilaire, 17721844)は、すべての動物は一つのタイプから導かれると考えた。つまり一つの典型的なパターンあるいは「原型」があり、それを変形していくことにより、すべての生物を導くことができるというのである。ジョフロアは一種の神の秩序のようなものを信じていたという。また同時代のゲーテ(Goethe, 17491832)もやはり「原植物」とか「原動物」なるものを考えて、原植物からすべての植物が導かれ、原動物からすべての動物が導かれると考えていた。

 ジョフロアやゲーテの見解は統一思想における「ロゴスの形成における捨象と変形のプロセス」から見て肯定されるものである。ただし統一思想においては、原植物にも、原被子植物、原裸子植物、原シダ植物、原コケ植物、原細胞というように段階があり、原動物にも、原類人猿、原哺乳類、原爬虫類、原両生類、原魚類、原無脊椎動物、原細胞という段階があると見るのである。

 当時のフランスでは、比較解剖学の権威であったキュヴィエ(Cuvier, 17691832)が、動物には基本的な四つの型があって、それらは互いに変換できない(類似性がないということ)と主張し、ジョフロアの説は退けられた。しかし神の創造の原理が明らかになるにしたがって、ジョフロアやゲーテの主張が再評価されるようになるであろう。

 すでに指摘したように、自然選択の問題点として、キリンの長い首に関連してオカピのワンダーネットの謎があった。それに関して金子隆一は次のように言っている。

 この事実に対する、唯一の筋の通った解釈は、キリンの祖先が木の葉を食べるために首を伸ばす決心を固め、将来を見越してワンダーネットを準備していた、というものである。つまり、キリンの進化は合目的的に進んだという、大変な結論になってしまうのである。このような例は、生物界に続々と見つかっている。この謎に答えられる進化論こそが、一番正しい進化論ということになる(*42)。

 このような進化論の難点に対して、新創造論は次のように答えることができる。神は、構想においては、高等な生物をモデルにして、それを単純化し、変形しながら低級の生物が考えられたのであるが、実際には低級のものから先に創造されたのである。したがって、オカピがキリンの祖先型であるということは、キリンをモデルにしてオカピが構想されたということである。言い換えれば、オカピはキリンを目指して創造されたのである。そのように見れば、オカピにもワンダーネットが存在していることが理解されるのである。


*42 金子隆一『もっとわかる進化論』日本実業出版社、1992年、202203

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 次回は、「創造(進化)の主体は何か」をお届けします。


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