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【B-Life『世界家庭』コーナー】
砂漠と炎熱のイスラムの国から
北アフリカ・スーダン日誌⑦
マラリアに5回かかり、その治療のための注射は計25

 2015年から2016年まで『トゥデイズ・ワールド ジャパン』と『世界家庭』に掲載された懐かしのエッセー「砂漠と炎熱のイスラムの国から 北アフリカ・スーダン日誌」を、特別にBlessed Lifeでお届けします!

 筆者の山田三穂さんは、6000双のスーダン・日本家庭です。

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 私が日本を発つ数日前のことです。責任者が「病弱で小がらなあなたが、アフリカに行くということは、どれほど大きな天の願いがあるだろうか。くれぐれも、マラリア(※)とサソリには気をつけるように」と言って送り出してくれました。その言葉が、ずっと頭の片隅にありました。

(※)マラリアは、マラリア原虫(寄生虫の一種)の感染によって起こる熱病で、蚊(ハマダラカなど)がこの原虫を媒介している。ヒトに感染するマラリア原虫には熱帯熱、三日熱、四日熱、卵型の4種類がある。

 あれから丸28年になりました。サソリは砂漠にいるものと思っていましたが、1センチくらいの黄色いサソリは家の中にいました。それでも、私は一度も刺されたことがありません。それは、どこの家でも猫を数匹は飼っていて、その猫がサソリとねずみを退治してくれるからです。

 猫に餌を与える習慣はないのですが、うっかり与えてしまうと、猫はサソリやねずみに見向きもしなくなります。そんなときはその家の誰かしらがサソリに刺されて、3日くらいしびれたままということになります。

 以前、日本大使公邸で会った国境なき医師団の日本人医師が言っていた話です。「首都ハルツームから、プロペラ機で地方に向かおうとしたとき、離陸直前でサソリに刺されてしまいました。すぐに、病院に搬送されたのですが、病院の医者が『黄色いサソリだったか? 黒いサソリだったか? もし黒いサソリなら、あなたの命はあと2時間だ。連絡を取っておきたい人がいるなら私が連絡してあげるから』とあっけらかんと言うのです。私を刺したサソリは見ていなかったし、全身がしびれているので返事をすることもできなかった。今も、生きているということは、きっと黄色いサソリだったのでしょう」と笑って話してくれました。

 そして最後に「日本だったら、瀕死の患者にそんなことを医者は言わないでしょう? これも生死に対する考えの違いなんでしょうね」と言っていました。

 病気はマラリアのほかに、A型肝炎や黄熱病といった風土病があります。私は、A型肝炎に1回、マラリアには5回かかりました。マラリアと聞くと、日本人の中には大変怖い病気に感じる人もいるでしょう。マラリアには4種類あって、中でも死亡率が高いのは熱帯熱マラリアと呼ばれるものです。

 その他のマラリアは、スーダン人にとっては症状の重い風邪のようなものです。小さい頃は何度もかかっても、成長するにつれて免疫ができるので、大人になっての発症は少ないようです。でも日本人や欧米人にとっては、やはり大変な病気と言えます。

▲ハルツームノース市にある、中流層が通う病院

▲病室で使用する毛布やシーツは持参しなければならない

 私が最初にマラリアにかかったときは、突然、全身の力が抜けて動けなくなり、一気に体温が40度を超えました。水を飲むこともできず、ふらふらでした。

 病院に行くと、クロロキン(抗マラリア剤)の注射を5回に分けて打たれました。とても強い薬で、打った直後から30分は強烈な目まいがして、立つことができませんでした。

 体力が戻るまでに1か月はかかったと思います。でも2回、3回とマラリアにかかるうちに免疫ができたのか、快復する期間は短くなっていきました。

 日本のある先輩家庭にマラリアのことを話すと、「あなたは自分で生きているように思っているかもしれないけれど、本当は神様が生かしてくれているんだよ」と言われました。この言葉で、我に返り、この国に送ってくださった神様と真の父母様に思いをはせ、感謝の涙があふれました。

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(この記事は、『世界家庭』2016年3月号に掲載されたものです)