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コラム・週刊Blessed Life 266
愛と感謝による平準化の理想経済

新海 一朗

 米国の資本主義経済と中国の社会主義(共産主義)経済は、前者が私的(個人的)所有であり、後者が社会的(国家的)所有であるという点において違いはありますが、両者に共通点があるとすれば、愛という要素が全く排除されているということです。
 すなわち私的所有であれ、社会的所有であれ、心理的要素が排除された単純な物質的所有に過ぎないというのが、その特徴の一つであると見ることができます。

 これに対して未来の経済理想を語るならば、真(まこと)なる愛に基づいた経済システムを考えなければならないということになるでしょう。

 独占的システムや格差的システムではなく、創造主と人間、全体と個人、隣人と私というように、真の愛に基づいた共同所有の形態を取るべきであるという視点から理想経済のシステムを実現しなければなりません。
 真の愛に満ちた贈り物である一定の神の財産(所有)が、神からわれわれ(私と隣人)に共同管理するようにと授けられることを意味すると考えるのです。

 人間は良心的な道徳基準を失い、利己主義に陥ることによって、個人主義に流れて土地や万物(財物)の一部を独占するようになりました。今日に至っては、自由民主主義という名の下に、合法的に広大な土地と莫大な財産を独占しながら、感謝するどころか、良心の呵責(かしゃく)すら感じなくなっています。

 隣で人が飢えて倒れるのを見ても、眉一つ動かさずに威勢よく生きている資本家たちの社会が資本主義社会の姿です。彼らの多くは、人類全体の平和と福祉という観点が欠落した生活を送っているのです。
 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、世界の富裕層と貧困層の格差が広がったことが分かりました。富の偏在です。

 フランスの経済学者トマ・ピケティ氏らが運営する「世界不平等研究所」(本部、パリ)が発表しています。
 世界の上位1%の超富裕層の資産は2021年、世界全体の個人資産の37.8%を占め、下位50%の資産は全体の2%にとどまっています。

 報告書によると、特に最上位の2750人だけで3.5%に当たる13兆ドル(約1500兆円)超を占めています。
 上位10%では全体の75.6%を占めました。1990年代半ば以降に世界全体で増えた資産の38%を上位1%が占めていたということになります。

 経済という概念は、従来と同じように、「第1次産業、第2次産業、第3次産業に基づいた財貨の生産、交換、分配、消費などに関する活動の総和」を意味しますが、未来社会の理想経済は、真なる愛を中心とした共同所有がその基盤となるために、その経済活動の様相は従来のものとは全く異なります。

 一言で言えば、経済活動の全ての過程は、物質的な財貨の流通過程であっても、それは心情と愛、感謝と調和が共に流れるところの、物心一如(一体であること)の統一的過程です。
 財貨も、真心と愛が共に宿っている物心一如的な個体であり、流通過程それ自体も、関係者たちの真心と愛が共に流れるところの物心一如的な過程です。

 経済の中に愛が流れるときには、極端な富の偏在は生まれず、調和が生まれます。
 資本主義であれ、社会主義であれ、現在のシステムには心情と愛、感謝と調和が欠けているため、流通過程において、モノ中心、財貨中心となり、それを収奪する者がさらに収奪するというゆがんだ構図が生じるのです。
 愛と感謝で富が平準化されるとき、それが未来の理想経済となるのです。