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平和の大道 29
第三部会(設計・施工)の報告

 皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
 同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
 Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!

佐藤 博文・著

(『平和の大道-国際ハイウェイ・日韓トンネル-』より)

⑤呼子・壱岐間の橋梁案
 九州と壱岐を結ぶ橋梁案(中央径間1700mの三径間吊橋三連を中心に、ほか吊橋二橋、連続トラス等から構成)

 呼子・壱岐間の壱岐水道は、幅20km、最大水深50m程度であり、本四架橋の技術や景観性から、当初より同区間においてはトンネルの代案として橋梁が期待されている。同案は、当初、3ルートについて比較検討された結果、壱岐東南の小島の各島経由が、多少延長距離は長いものの、水深、支持層深度が比較的浅く、施工性、経済性に有利と判断された。構造は中央径間1700mの三径間吊橋三連を中心に、ほか吊橋二橋、連続トラス等となっている。

 問題としては、本計画では最大水深65m、支持層深度100m以上で、かつ外洋であり、橋梁基礎施工においては、さらに本四架橋以上の技術開発が必要である。また、そうした下部工の施工規模や、ケーブル素材の発展に併せて、経済的な支間長についても、さらに検討の余地がある。

 第三部会としては、当面、特に対馬海峡西水道における固結堆積層の地質・土質工学的性状の解明を目指す考えである。またその一方では、最近技術の進展が目覚ましいシールド工法や、リニアモーターカー等の現状を把握し、また残された基礎的な課題の一つとして、カートレイン採用の場合のターミナルの規模、運搬可能な車両数等についても研究を行う計画である。

⑥第二部会提示案
 同案の特徴は、問題の対馬海峡西水道の海底下地質について、西水道においては南下するほど新期堆積層が小さくなっているとの推定に立ち、ルートを下島西方に迂回させるようなコースを取り、未固結堆積層を通過する区間を最小限にして、大部分を山岳工法で施工しようという点にある。また、走体は新幹線を考え、最急勾配は1000分の20で、対馬では地下駅としている。ただし島内にルートを回して、さらに23km延長させれば、地上駅も可能だとしている。

 課題・問題点としては、海底下数百mの大深度における注入固結技術の適用性、山岳工法における掘削速度、さらに最小限とはいえ数km以上になると思われる未固結堆積層通過区間で、300500mの深度での施工法である。また同案では、最急勾配1000分の20の区間が約100kmで、全長の約半分を占めており、縦断線形的に見て問題が大きいとも考えられる。

⑦道路とリニアモーターカー併用案
 同案は、青函トンネルの実績を踏まえて、海底部の土被りを100m程度にし、それによってトンネルの位置を上げることにより、水圧を青函トンネル並みとする。ルートは壱岐から巨済島までほぼ一直線のコースを取り、対馬、壱岐での地上駅設置を可能にするものである。施工法は泥水シールドを主体にしながら、従来の注入掘削の山岳工法も可能な区間では採用する。

 断面については、走体との関係により、リニアモーターカーのみの場合は複線用本坑一本または単線用本坑二本が考えられるが、大口径とすれば、道路との併用断面も可能であろう。また上記いずれの場合も、マルチ・フェース・シールド工法の採用も可能性があると思われる。これはシールドが二つある工法で、線路を二本通すトンネルを掘る時に使う。

 同案における課題・問題点としては、前案と同じように、200m以上の深度における泥水シールド工法の可能性、また同深度における注入、掘削工法の技術的難しさがある。

 また山岳工法は、薬液を一度にたくさんの穴に注入する工法である。青函トンネルで実施した工法で、軟らかい地層の場合、ある程度の硬さにしてから掘る。薬液を注入すると、硬い部分と軟らかい部分ができるので、トンネルが曲がる場合がある。それを防ぐために、同時にたくさんの箇所に注入するのである。

 以上のごく概略の比較検討だけを見ても、いずれの計画案も膨大な問題・課題を含んでいる。海底地質の性状をはじめとする各種自然条件の多くがなお不明であり、世界中においても当計画に匹敵する規格の施工技術の事例もほとんどない現段階では、各案の是非を判断することは難しいと言える。

 さらに同計画は、国際的な経済、政治、法律や地域開発計画とも密接に関わる問題であるため、土木技術的観点のみから判断できるものでもない。それゆえ、各種自然条件の早期把握と、土木技術以外の分野における大きな方向性の設定、調整に期待するところが大きい。

(『友情新聞』2013年11月1日号より)

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 次回は、「国際ハイウェイ建設事業団」をお届けします。


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