夫婦愛を育む 24
「共感」できていますか?

ナビゲーター:橘 幸世

 近年コミュニケーション力が重視される中、良好な人間関係、信頼関係を築く上で、「傾聴」や「共感」が大切なポイントとして語られることが多くなりました。これらを心掛けている人も増えていることでしょう。
 ただ、言葉は知っていても、プロのカウンセラーや意識的に努力している人は別として、実生活でできている人はあまり多くはないかもしれません。

 「共感」について検索してみると、心理学では「共感的理解」「感情移入的理解」と出てきます。
 詳しく紹介すると、「共感」と言うときは、相手の体験を自分も共有(体験)している場合です。一方、「共感的」は体験を共有していません。全ての人の体験を共有することは実質不可能ですので、聞き手は、あたかもその人のようにという状態を失わず(同時に、相手の感情に巻き込まれることなく)、相手の私的世界を自分も感じる状態に置きます。
 そこには無条件の肯定的受容が伴います。批判せず、無条件に認めるのです。

 信仰・信条といった明確な価値観や判断基準をもっていると、ややもすれば、相手の語る内容をそれに当てはめて分析する作業が先になって、相手の気持ち(痛みや葛藤)を理解し受け止める・共に胸を痛めるといったことが疎かになってしまうことはないでしょうか? 平たく言えば、頭で聞いていて、心で聞いてない。聞きながら、次に自分が何を言おうか(どうアドバイスしようか)考えながら聞いている。

 私自身もそんな聞き方をしてしまい、後でガックリ、反省することがあります。
 他方、話す側にいるとき、相手がそう聞いていると感じることもあります。そんな聞かれ方をすると、やっぱり話していてうれしくないんですね。

 当人は相手のことを思い、力になれればと時間を割いて一生懸命聞いているのですが、話している側は「分かってくれた」とは感じ難いかもしれません。時には、聞き手の愛や思いやりは伝わらず、冷たいと誤解されることも・・・・・・。

 余談ですが、英語の sympathy という単語は、「共感」とも「同情」とも訳されます。共に感じ、情を同じくするんですね。
 まず相手の痛みを受け止める、共に心を痛める、…もしかしたら、その方がアドバイスよりも、相手に善い方向に向かう力を与えるかもしれません。