平和の大道 26
海底トンネルの工法

 皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
 同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
 Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!

佐藤 博文・著

(『平和の大道-国際ハイウェイ・日韓トンネル-』より)

山岳工法とシールド工法

 海底トンネル工法には、大まかに分けて「山岳工法」と「シールド工法」等がある。山岳工法は従来からの工法で、ダイナマイト等で岩盤を爆破して前に進みながら、掘り進んだ箇所には鉄の鉄板を組んで支える。その鉄の矢板のことを「支保杭」と言う。シールド工法は鋼鉄製の円筒で作業員を保護しながらトンネルを掘る工法である。

 最近の都市部の地下鉄工事は、ほとんどシールド工法で行われている。掘るのは、機械掘りで、回転する巨大な刃(カッタービット)を付けた掘削機で掘り進みながら、鉄筋コンクリートの型枠(セグメント)をトンネルの壁面に自動的に装着・固定していく。

 山岳工法は今では、NATM(ナトム)工法が標準になっている。「NATM」とはNew Austrian Tunneling Methodのことで、オーストリアが開発した最新の山岳工法のことである。この工法では支保杭を使わない。トンネルを掘ると、空洞になった壁では周囲の地層からの圧力バランスが崩れる。その圧力を抑えるために、従来の山岳工法では支保杭をはめたが、NATM工法ではロックボルトという長い鋼鉄製のボルトを、地中に向かって打ち込み、岩盤を締める。それによって支保杭が不要になるので、施工が簡単でコストが安くなる。

 シールド工法ではセグメントにエアジャッキが付いていて、それでシールドを押すようになる。回転するカッタービットによって切り出された土砂や岩石は水と撹拌されてパイプで後方に押し出される。現在、地下鉄工事はほとんどシールド工法になっているが、重量がかさむため、地層が柔らかすぎると沈下するので使えない。少しでも掘る方向がずれると修正するのが難しくなる。

 青函トンネルは山岳工法で掘られたが、英仏海峡トンネルは地層が良かったのでシールド工法が使えた。人間の頭大の石がたくさん入っているような地層だとシールド機は使いにくい。シールド機は立坑を掘って降ろすので、直径20mくらいの立坑が掘れるような条件が必要になる。

 それである程度掘り進むと、終点の箇所にシールド機を引き上げる立坑を掘っておく。海洋では人口島を造らなければならない。東京湾横断道路ではその工法を採用する計画で、使用されるシールド掘削機は直径が13.9mで世界一の大きさである。機械といっても、こうなると巨大な建造物である。シールド機は掘るトンネルに合わせて製造されるので、完全特注品である。

 山岳工法では切羽(トンネル掘削の前面)に約30名とたくさんの作業員がいなければならないので、それだけ危険が増えることになる。それがシールド工法では作業員は3人で済む。最近、シールド工法が選ばれている理由は安全性が高いからだが、その代わりコストも非常に高くなる。

 シールド工法は地層が硬すぎても使えないので、硬い地層では、強力な爪が付いているトンネルボーリングマシン(TBM)を使う。回転刃は特殊な銅で作られており、これが非常に高価である。実際には、地層やその他の条件に合わせて工法を組み合わせることになる。

日韓海底トンネルの掘削工事

 日韓海底トンネル掘削工事の場合は、トンネルの掘削地点が、唐津・壱岐間、壱岐・対馬間、対馬・巨済島間の3カ所になる。唐津・壱岐間、壱岐・対馬間は山岳工法、対馬・巨済島間は、シールド工法になるであろう。シールド工法は前進速度が速いので、最も距離が長い対馬・巨済島間の工事よりも、壱岐・対馬間の工事のほうが、時間がかかると予想される。

 唐津・壱岐間、壱岐・対馬間の海底トンネルの掘削は、青函トンネルで使用した掘削技術で十分対応できるという調査結果が出ている。問題は対馬・巨済島間のシールド工法による掘削である。シールド機は完全特注品であることは前述したが、掘削地点の地質に合わせて設計・製作される。場所が変われば、いったん使用した機械も使えなくなる。地質とその堅さ、トンネルの口径の大きさ等によって仕様が異なるためである。

 そのためにも、まず、掘削予定地点の綿密な地質調査が不可欠となる。それ故、朝鮮海峡に面した対馬西側における調査斜坑と水平坑の掘削と水平ボーリングによる地質調査が必要になる。

(『友情新聞』2013年8月1日号より)

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 次回は、「大断層などの問題点も」をお届けします。


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