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続・夫婦愛を育む 1
ネガティブ夫が責めてきたら

ナビゲーター:橘 幸世

 「夫婦愛を育む」シリーズのファンの皆さま、お待たせいたしました!
 橘幸世さんによるエッセーが、「続・夫婦愛を育む」のタイトルで配信(不定期)されることとなりました。

 ボクシングにはほぼ興味がなく、録画したきりだったNHK「逆転人生~全米熱狂!夫婦でつかんだ逆転KO」(初回放送日:20201012日放送)。
 今年に入り、ようやく視聴しました。「早く見ればよかった」と後悔しています。

 2011年、ラスベガスでジェームズ・カークランド対石田順裕(のぶひろ)の試合が行われました。カークランドはそれまで27戦全勝24KO。マイク・タイソンの再来とも。
 度重なる強盗・暴行事件で2年刑務所にいた後、出所したカークランドが世界王者への階段を上るためのかませ犬(引き立て役)として選ばれたのが、石田選手でした。オッズ(勝算)は17対1。下手すれば殺されるとさえいわれていました。

 そんな危険な相手に挑む石田選手は、対照的に根っからのネガティブ人間。工場で働きながらボクシングを続ける35歳、引退の瀬戸際にありました。
 試合前、緊張から体の震えが止まらずほぼパニック状態に。そんな彼から妻に放たれた言葉は、「この試合、おまえがやれ言うたんやからな。負けたら、全部おまえのせいやからな」。

 理不尽で情けない夫の言葉、皆さんだったらどう反応しますか。
 もちろん妻がその試合をセッティングしたわけではありません。

 妻の麻衣さんは、「なら、勝ったら全部私のおかげやな」と答えます。

 その一言で冷静になれた石田選手は大番狂わせをやってのけます。彼は一躍ヒーローになりました。

 高校で全国大会優勝。大学で国体2位。周りは当然プロになると思っていましたが、ネガティブ人間の彼は、プロになっても食べていけないと、卒業後は児童福祉施設の職員になります。

 施設の子供たちに時々ボクシングを教えていたところ、その子供たちから背中を押されてプロに。
 夢を持つ、一生懸命になれることを持つ大切さを子供たちに教えられたら、その姿を見せられたらと、プロボクサーとして励みます。が、パンチ力が弱く、プロとしては苦戦続き。

 昼は工場、夜はジムでトレーニング、しんどくて「もうやめたい」が口癖でした。
 「もうやめようかな」と愚痴ると、臨床心理士でスクールカウンセラーの妻は、「好きにしたら」と返します。

 「ボクシング嫌いになったの?」
 「いや、嫌いになってない」
 「続ける? やめる?」
 「続けます」

 やめたら夫は将来絶対後悔する、「やっといたらよかった」と愚痴るのが、彼女には目に見えていたのです。
 夫が「やりきった」と思えるところまで行ってからやめてほしいと思っていました。

 夫がぐちぐちする情けない姿を見たら、多くの妻はどう感じるでしょうか。イライラしてきつい一言をぶつける女性も少なくないかもしれません。しかも、それが日常だったら。

 こんな対応をできる麻衣さんは、職業柄とはいえ、見事としか言いようがありません。
 夫がぶつけてくる負の感情を、いい意味で真正面から受けずに(それにのみ込まれることなく)、ちょっと引いて、距離を置いて見る。とても大切なことだと思います。

 石田選手は、ラスベガス後、世界中のトップ選手と対戦。完全燃焼の末、40歳で引退し、現在は夫婦でボクシングジムを運営しています。

 子供たちの手本になりたいという夫の思いと、夫の本心に働きかけ続けた妻が、一緒に成し遂げた偉業でした。