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うまくいく夫婦仲の法則 5

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「うまくいく夫婦仲の法則」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
 目指すは「夫婦仲良し、円満一家、どんな嵐もどんとこい」! 輝く夫婦、幸せな家庭を築くための秘訣(ひけつ)をご紹介します。

松本 雄司・著

(光言社・刊『二人で学ぶ うまくいく夫婦仲の法則』〈200251日初版発行〉より)

第一章 家族についてもう一度考え直そう

6「息子は何をする人ぞ」

 中学校、高校くらいになると、お父さんなどは息子が何をしているかほとんど知らないことが多いのです。この前もあるお父さんから相談を受けました。本当に落ち込んでいました。高校生になる息子がいるのですが、世の中ではいろいろな非行とかが多い中で、うちの子はいい子で良かったとずっと信じてきたのです。小学校のころは「パパ、パパ」となついてくれたし、いい子だった。そのイメージを持ち続けていたそうです。自分もだんだん仕事が忙しくなって、子供も大きくなったらあまり一緒に遊んだり、じっくり話をする時間はなくなった。けれどもそういう子供のイメージが何となく残っている。こういう時代だから自分はとにかく外で仕事を一生懸命にやってクビにならないように努める。とにかく少しでもたくさん稼いで、妻や子供に惨めな思いをさせないこと、これが家族への愛だと信じてやってきたわけです。

 「おれは仕事で忙しいから、子供の教育は頼んだよ」

 といつも言ってきたのです。奥さんが一生懸命子供を見てくれているから大丈夫だと信じていた。

 ところがあるとき警察署から電話があった。

 「お宅のお子さんが保護されていますから、会社が終わってからでいいですから来てください」

 「えっ、交通事故でもあったのですか!?」

 「いえ、そういうことではありませんのでご心配なく。ただ電話では話せない内容なのでご足労願います」

 署に行ってみると、息子が遊び仲間と一緒に傷害事件を起こしたという。喧嘩して人に大きな怪我をさせてしまって、補導されたというのです。最初は「うちの子が?」と信じられなかった。しかし、話を聞いてみると、紛れもない事実であった。

 「お宅のお子さんは主犯格ではないから、傷害事件は大したことにはならないと思いますが、いろいろ調べてみるとこのグループには余罪がたくさんあります。窃盗をたくさんやっている。しかも、覚醒剤も絡んでいるようなのです。そうなると簡単ではありません。何度かご足労願うことになると思いますが、ご了承ください」と言われた。父親は、聞きながらだんだん自分の顔がこわばって青ざめていくのが分かった。そして頭の中が真っ白になってしまった、というのです。あまりにも自分の思っていた息子のイメージと、目の前で聞く息子の姿とが違っていたからです。

 それで家に帰って、奥さんの顔を見るや否や、怒鳴りつけました。

 「おまえは、一体何をしていたんだ!!」

 「おれは会社で精一杯働いているんだ。だから、おまえは子供に責任を持て、と言ってきたじゃないか、何をしていたんだ!」

 奥さんは黙っておろおろ泣いていた。ところがあんまり自分ばかり責められるものだから、さすがに我慢できなくなって爆発した。

 「じゃあこの際、言わせてもらいます! 一体、今まで何度あなたに言ったんですか。大きくなったら子供は父親がいなければうまくいかない。私だけではだめだ、もっと子供と向き合ってほしいと、何度あなたに言いましたか。そのたびにあなたは、おれは仕事が忙しいんだ、おまえたちのために働いているんだ、それはおまえの仕事だと言って、本気で一度でも取り合ってくれたことがありますか!」

 「何を言うか。俺の責任にするのか!」などと散々言い合って、やがて疲れて、しばらくは互いに黙りこんでしまった。それからぽつりと、「何でこんなことになったんだ……」と、ふたりで話し始めたというのです。

 そこで、お父さんにいろいろと息子さんのことについて聞いてみました。

 「息子さんはどこの高校ですか?」

 「◯◯高校です」

 「何年生ですか?」

 「2年生です」

 「何組ですか?」

 「……さあ」

 「担任の先生は?」

 「……さあ」

 「クラブ活動は?」

 「……さあ」

 「親しい友達はいますか?」

 「いるようです。でも、土曜、日曜もほとんど家にいませんから」

 友達の名前も知りませんし、どんな遊びをしているかも全く知りませんでした。

 今度は、息子に会ってみました。

 「お父さんは、何の仕事しているの?」

 「サラリーマンさ」

 「何という会社?」

 「◯◯工業株式会社……かな?」、と会社の名前は知っていました。

 「どんな仕事をしてるの?」

 「……さあ。総務かな、外に出ることも多いらしいから、営業かな?」

 部長か課長かも知らず、今、具体的にどのような仕事をしているのかを全く知りませんでした。

 十数年も一緒に生活していても、毎日会える環境にあっても、父親がどのような仕事をしているかさえ、はっきりとは知らないのです。これが実情でした。

 お父さんは話しながら、自分が息子のことについて何も知らないこと自体に自分でショックを受けていました。「分かっていたつもりなのに……、自分は息子のことを何も知らない。ましてや今、何を考えているのか、何を悩んでいるのか、何も知らない」と。

 もちろん、お母さんのほうは、いろいろ知っていました。

 特に中学生以上の男の子に関しては、父親の存在は絶対不可欠です。母親だけに任せてはうまくいきません。そういう意味で凶悪犯罪などに陥っている少年は、ほとんど父親との関係が問題であるということが分かっています。

 今、一つの例を話しましたが、それくらい私たちは家族とは名ばかりで、お互いをよく知らないのです。個人なのです。だから、気がついてみたら息子、娘の心は遠くに行っていた、あるいは夫婦の心は遠くに離れていた、そういうことがあるのです。

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 次回は、「家庭とはどんなところであるべきか」をお届けします。


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