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コラム・週刊Blessed Life 255
習近平3期目の全国人民代表大会が開催される!

新海 一朗

 習近平の第3次政権が本格的に発足し、始動するという流れで、習近平自身の国家主席再任が決まるのが今回(35日~)開幕した中国の全国人民代表大会(全人代)です。

 憲法改正を通じて国家主席の任期を強行に撤廃し、「210年」という制度を除去した習近平にとって、3期目入りは手続きという以上に、試練だと言えるでしょう。

 国家の命運を左右するような政策で失敗を犯せば、異例の3期目入りに疑問符が付き、中国共産党政権としての権力基盤に傷が付きかねません。
 その意味で、2023年という3期目元年は、今後の中国の行方を占う上で極めて重要です。

天安門広場(中国・北京)

 全人代は国会に相当するものですが、北京で行われ、経済成長目標や国防費など新年度予算を決定します。
 「ゼロコロナ」政策で落ち込む経済の回復を目指しますが、厳しい行動制限を実施した後遺症を抱え、対米関係の再構築など課題は山積しています。政策を実行する政府首脳を習近平の側近で固め、一点集中を一層進める構えです。

 35日には李克強首相が最後の政府活動報告に臨んで施政方針を説明し、経済成長目標の表明などが行われました。
 2022年はコロナ禍の影響で成長率は3.0%となり、21年の8.1%から大幅に減速したことは、すでに内外に知られるところです。

 2023年度は成長率5%前後という高い目標が示されましたが、中国経済は非常に厳しく、習近平の経済政策がうまくいっていない中、企業や国民の不満は鬱積(うっせき)している状況です。

 昨秋の共産党大会で習氏は総書記として異例の3期目に入って新たな党指導部を発足させましたが、全人代では国家主席として3選を決め、新政府組織のスタートとなります。

 その中で、習氏側近で党序列2位に抜てきされた元上海市トップ、李強を新首相に選出して政府の人事を刷新、筆頭副首相には序列6位の丁薛祥、経済担当の副首相には何立峰が就任するなど、習派の側近体制の構築となっています。

 共産党の権限を強化する行政機構改革も実施し、党の機構強化を図り、習近平独裁の一点集中体制は3期目、さらに盤石な基盤造りがスタートしました。

 そのような体制がうまくいくかいかないか、イエスマンの側近体制であればよいというものでもなく、裸の王様になる可能性もささやかれており、そうなれば、一番の問題は習近平そのものであるとなりかねません。

 彼が万能であれば問題ありませんが、ただの権力欲に取りつかれた独裁者に過ぎないならば、習近平体制は崖っぷちという弱点を持っていると見ることもできます。

 閉幕日の13日、李強新首相の誕生とともに、記者会見が行われる予定ですが、まずは会期中の7日に開かれる秦剛外相の会見で、中露関係、米中関係、日中関係など、外交に関してどのような発言がなされるかが注目されます。
 まさに、外交において中国は各国からの信頼度を落としており、今後の国際政治の外交政策をどう進めるのか注目が集まっています。

 米国に亡命した蔡霞・元中国共産党中央党校教授が指摘するように、民間企業を締め上げ、政策の細部にまで介入して民衆を苦しめる習近平の統治スタイルに対して、中国社会は大きく反発しています。

 今や中国は、天安門事件以降初めて、政府内部の反対意見だけでなく、激しい民衆の反発と社会騒乱の現実的リスクに直面しています。
 習近平の3期目は、間違いなく多難であると言えます。