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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

中国、ウクライナに無意味な12項目の提案

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、220日から26日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 プーチン大統領、年次教書演説(21日)。日米韓、イージス艦使い共同訓練(22日)。NATO(北大西洋条約機構)、中国が露に兵器供給検討を確認(23日)。中国、ウクライナに危機解決のための12項目の提案を発表(24日)。ポーランド、レオパルト2をウクライナに初の引き渡し(24日)、などです。

 中国外務省は224日、ウクライナ危機の政治的解決に向けた「中国の立場」を示す文書を発表しました。
 12の項目にわたる提案ですが、これまでの主張の「枠内」と言えるものであり、なぜ今ごろ、というスッキリしない印象を持ちます。

 ロシアによる侵略開始当初から、ウクライナはロシアと「同盟」以上の関係にあると喧伝(けんでん)する中国に対して、「仲裁」の労を取ってほしい旨を伝えていました。しかし中国は動きませんでした。

 昨年34日、台湾訪問中だったマイク・ポンペオ前米国国務長官は、台湾のシンクタンクに招かれて行った講演でウクライナ情勢に触れ、中国が2011年にウクライナとの間で、第三国による領土侵犯を許さず、仮に脅威にさらされれば互いに協力するとした協定を結んでいることを指摘しました。
 そして、「中国は、(中国への返還後、50年は現行制度を維持するとした)香港の扱いだけでなく、今回も約束を破った」と批判したのです。

 中国政府の「12項目の提案」は、各国の主権尊重、冷戦思考の排除、戦闘停止および停戦、和平交渉の開始、人道危機の解決、市民と戦争捕虜の保護、原子力発電所の安全維持、戦略リスクの減少、食糧輸送の保障、一方的な制裁の停止、産業チェーンやサプライチェーンの安定確保、戦後再建の推進、というものです。

 要約すれば、ウクライナ情勢の悪化により、制御不能になる事態を避けなければならないとし、「対話と交渉がウクライナ危機を解決する唯一の道だ」と強調。ロシアとウクライナの直接対話の再開を求め、建設的な役割を果たすと述べています。

 また、対露制裁を継続する米欧を念頭に「一方的な制裁の停止」を求め、「軍事集団の強化や拡張では地域の安全は確保できない」と主張。その一方で、核兵器の使用や脅し、原子力発電所への攻撃には反対し、ロシアとの距離も感じられる部分もあります。

 停戦にめどが立つ前から「戦後再建の推進」にも言及している点も実効性の乏しさとして挙げておきます。

 この12項目の提案の効力には期待できません。習近平主席はロシアの侵略開始後、プーチン氏とは対面を含めて4度も会談しています。しかしゼレンスキー大統領との会談は全くありませんでした。

 ゼレンスキー氏は24日、侵略から1年に合わせて記者会見しました。その中で、中国外務省が「文書」を発表したことに振れて、「戦争の当事国だけが和平案を提示できる」と慎重な立場を表明、というより拒否したのです。しかし一方で、習近平国家主席と会談する用意があると明らかにしました。

 一度、ポンペオ氏が指摘するようなこれまでの歴史的経緯を踏まえて、しっかりと習氏にウクライナの主張を強く伝えたいのでしょう。
 「12項目の提案」の背景には、追い込まれた中国の立場が反映しているのかもしれません。



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